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第30.5話:エターナルシェル ― 未来資源の真実
教室の大型モニターに「平和資源交換条約」の映像が流れていた。
緑と水色を基調にしたCGの中で、透明な殻に覆われた球体が輝いている。
字幕には「エターナルシェル=人類の希望」と大きく表示され、生徒たちは息をのんだ。
教師は墨染めのスーツに緑のネクタイを締め、穏やかな笑顔で言った。
「火力の8倍の力を持つ新エネルギーです。これで世界も安心ですね」
まひろは机に肘をつき、手の中のペンを弄びながらつぶやいた。
「これって……原発の燃料と交換してるんだよね?」
クラスの誰かが答える。
「そうだよ。核を未来のエネルギーに変える平和的な仕組みなんだって」
だが映像の裏側では、別の現実が進んでいた。
異国や佳州の核資源は「原発燃料」と名目で輸送され、
大和国の小島や編入領土に分割して格納されていく。
ラベルには「エターナルシェル発電所」と記されているが、実際は核弾頭を秘匿する格納庫。
ネット軍の編集室では、灰色のフーディを着たスタッフが加工映像を組み立てていた。
緑の光をまとったCGタービン、空を飛ぶドローン、未来都市の夜景。
すべて「地球を救う映像」として配信され、市民の疑念を覆い隠す。
月刊蜜の最新号では、表紙いっぱいに「エターナルシェル」の球体が描かれていた。
キャッチコピーは「核は薄めればエネルギー、濃ければ未来の抑止力」。
読者は誇らしげにそれを手に取り、街角の掲示板には「人類の希望」という文字が輝いていた。
誰もが「未来資源」と信じるその殻の中に、本当は何が眠っているのか。
それを知る者は、ほんの一握りのネット軍だけだった。