第40話:地下、地上を走る未来
開通式典
大和国中央駅。
巨大なスクリーンに映し出されたのは、銀と緑のラインが走る新型車両。側面には翡翠の丸を描いた国旗が輝き、観客席から「未来だ!」という歓声が湧き起こった。
制服姿のまひろは水色のシャツに灰色のズボン、胸元には「学生ランクA」のバッジを付けていた。瞳をきらめかせてスクリーンを見上げる。
「ねぇミウおねえちゃん……あの電車、飛行機よりもずっと未来っぽいよ」
ミウはベージュのワンピースに緑のスカーフ。耳元のパールピアスが光を反射していた。
ふんわりと微笑みながら、パンフレットを開いて説明する。
「え〜♡ この電車はね、飛行機の6分の1の燃料で動くんだって。
それに翡翠核を積んでるから、環境に優しくて安心なんだよねぇ」
周囲の市民も声を揃えた。
「飛行機は過去!」「電車は未来!」
プロパガンダの街
地下鉄の通路。壁には巨大なポスターが並んでいた。
「燃料6分の1、安心は6倍」
「飛行機は空を汚す、電車は未来を守る」
「翡翠の軌道が世界をつなぐ」
学生たちは授業の一環として駅に集められ、ポスターをノートに写し取り、「未来輸送の意義」をレポートにまとめるよう課題を出されていた。
裏の真実
だが式典会場の奥、ネット軍の管制室では別の映像が流れていた。
モニターに映るのは「飛行機は燃料を浪費する」という加工映像。
過剰に煙を吐き、墜落しそうに揺れる飛行機のフェイク映像が延々と流されている。
緑のフーディをかぶったゼイドは、その映像を見つめていた。
「人は比較を見せられると、選んだ気になる……。だが実際には選択肢なんて最初から用意されていない」
無垢とふんわり同意
帰り道、電車の試乗を終えたまひろは瞳を輝かせて言った。
「ぼく……ただ電車に乗っただけなのに、未来を選んだ気がするんだ!」
ミウは緑のスカーフを結び直し、柔らかく笑った。
「え〜♡ それが大和国のすごいところなんだよ。
安心できる未来を“選んだ”って思えるだけで、みんな幸せになれるんだから♡」
街頭スクリーンには、新幹線と地下鉄が赤い大陸の外周を走るCG映像が映し出されていた。
そこにキャッチコピーが重なる。
「未来は軌道に乗った。」
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