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第41話:海を走る未来の血管
夜のリビング。
まひろは水色のパーカーに短パン、ランドセルを片側だけ背負ったまま床に座り込み、ポテトスナックを指でつまんでいる。
ミウはモカのニットに灰色のプリーツスカート、イヤリングを揺らしながらソファに腰を下ろしていた。
二人の目の前には、大和テレビの特番が流れていた。
画面にはタイトルが大きく映し出される。
「海を走る未来の血管 ― 大和国の貨物船と物流」
港の光景
画面は夜の港へ切り替わる。
無数の巨大貨物船が照明に照らされ、コンテナを積み下ろしている。
「旧日本時代に比べて8000倍に増えた貨物船! これこそが未来を繋ぐ血管です」
アナウンサーが誇らしげに語る声が響く。
映像では緑と銀の制服を着たサムライ(大和軍)が警備に立ち、市民を笑顔で案内している。
字幕には「未来物流拠点:旧雨国シアトル港」と表示された。
物流の仕組み
映像は次に配達の様子へ。
コンテナから降ろされた荷物はトラックに積まれ、さらに住宅地では緑の制服を着た市民配達員がリヤカーで荷物を運ぶ。
「宅急便は人の手に戻りました。空は軍が守る領域です。だからこそ“人が届ける安心”が生まれたのです」
まひろはスナックを握りしめて声をあげた。
「すごい! 貨物船って海の新幹線みたいだね!」
ミウはイヤリングを軽く触りながら、ふんわりと笑った。
「え〜♡ ほんとだよねぇ。海は未来を運ぶ血管。物が動くたびに、大和国の未来が強くなるんだよ♡」
新幹線と地下鉄の紹介
次に映像は地上と地下を走る列車へ。
新幹線の車体は大和国旗の緑丸をあしらい、地下鉄は港町から都市を結んでいる。
アナウンサーはこう語る。
「飛行機は時代遅れ。燃料は飛行機の6分の1で済む新幹線と地下鉄が、人の移動を支えます」
子どもたちの学校では、この数字がそのまま暗記させられていた。
裏の光景
暗い部屋。
緑のフーディを着たゼイドが、モニター越しに港町の映像を見つめていた。
実際の港には錆びた船、疲弊した配達員、混雑する倉庫が広がっている。
だがAI加工の映像では最新鋭の貨物船が規則正しく並び、未来都市のように輝いていた。
ゼイドはモニターに指を走らせ、小さく笑った。
「数を“8000倍”と呼べば、人は計算をやめる。
未来を見せるほど、過去を思い出さなくなる」
結末
テレビ画面には「次回予告:月から届く光」とテロップが表示された。
まひろは目を輝かせて叫んだ。
「ぼくも大きくなったら貨物船に乗りたい!」
ミウはふんわり微笑みながら頷いた。
「え〜♡ 素敵だよねぇ。海は大和国の未来を運んでるんだから♡」
コメント欄には「貨物船最高!」「ヤマトに物流の未来あり」「新幹線と海の血管で世界を守ろう」といった文字が並び、視聴者たちは誇らしげに画面へ見入っていた。