ンーーーー!!ンーーーー!!!
なんだ、あの人。
目と口が縫われている女だ。
両腕もない。
ヨタヨタと、喉からンー!と声をだして街を歩いている。
色んな幽霊を見てきたが、あれはなんだ。
幽霊とは違う、のか?
どうしよう、もうすぐすれ違う、やばい、これは恐怖だ。恐怖心は人を殺す。
「怖がっちゃダメだ、怖がっちゃダメだ、怖がっちゃダメだ…」
そして、その女はすれ違う瞬間足を止めた。
僕も止まってしまった。
女は
ンー、ンー、と喉を鳴らしながら、ビチビチと縫われた口の糸を突っ張らせた。
そうして、開いた口の隙間から女は、小さな声で僕の耳元で囁いた。
「オカァサン、タスケテェ」
後日、婆ちゃんにその話をしたら
地獄から一時的に逃げ出してきた罪人だろうといった。
地獄に行くとあんな惨い事になるのか。
僕は興味本位で婆ちゃんに聞く。
「何をしたら地獄に連れてかれるの」
婆ちゃんはピタッと一瞬皿洗いを止めると、また再開し優しい声で僕に教えてくれた。
「命を殺したらじゃね〜」
直接的に?間接的に?それは虫とかもカウントされるの?
怖くて聞けなかった。
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