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朝。湊音の隣で寝ていた李仁はいない。「李仁ぉっ」
湊音は慌てて体を起こしベッドから降りると机の上にあった日記帳は開いていた。見ると昨日の欄にハートマークと『5』と数字が書いたあった。
「5って……ってしかもハートマーク……」
5、他のページにも李仁の字で書いてあった。今までも書いてあったのだが気づかなかったが、これは何だと思いつつも湊音は二日酔いで頭が痛かったのか、んんんんっと頭を抱える。
ふと前の日のページをめくる。李仁の書いた文字を見て湊はハッとする。
『ミナ君がここ最近不安定で心配。何度抱きしめても何度声をかけても寂しそうな顔をする。今まで嫌がってた体位も無理してやって……わたしに好かれようとしてる。そんなことしなくてもいいのよ。わたしはミナ君から離れないよ。心配しないで』
湊音は日記をそっと閉じた。
台所からいい匂いがする。朝ごはんを李仁が用意している。焼き魚と目玉焼きであろう。
「李仁に心配かけちゃダメだね……」
湊音は部屋を出た。台所では李仁が待っていた。ちょうどトーストを入れるところであった。
「おはよう」
「おはよう。ミナくん。そろそろ起きる頃かと思って」
湊音はすぐにでも抱きしめたかったがさっきの日記を見てしまうとそばに行けなかった。だが李仁が近づいてきて湊音を抱きついた。
「もぉ、ほんとミナ君は甘え下手……」
「だってぇ」
「今からトースト焼くから早く身支度してきなさいよ」
「うん」
湊音は微笑んだ。
「でもあと少しだけ抱きついてていい?」
「もちろんよ、ミナ君」
「あのさ、日記帳にさーハートの中に数字書いてあったけどあれは何?」
「気づかなかった? エッチした回数」
「っ! そんなの書くのかよ」
「昨日だってすごく激しかったー」
「恥ずかしいっ、消してよ」
「いやだー、このまま抱きついてたら回数増えちゃうー」
「もぉ! ご飯食べるぅー」
いちゃついた後しっかりと朝ごはんも済ませて李仁は仕事、湊音は友人の美容院へ。
美容院に入ると担当でもあり湊音たち二人の友人でもある大輝が待っていた。
最近改装したばかりの店内。いつもの個室に通される。
「ねぇ、李仁は元気?」
「うん、あ……お見舞いありがとう。快気祝い……本当は李仁が渡したかったらしいけど予約が取れなくて」
「わざわざありがとう。また僕から連絡入れておくよ」
李仁の快気祝いの品を受け取った大輝。実は彼、李仁の元彼である。李仁がいなくて心なしか寂しそうな顔をする彼に対して湊音は複雑な気持ちになる。
元彼と知ってながら彼のところに行くのもわけがある。大輝は腕が良くてセンスもあり正確できめ細やか。
「もみあげのところ少し刈るのも良いかも」
支障のない程度に、と湊音は言おうとしたらかなり刈られた。
お洒落に無頓着な湊音はほぼ大輝に任せているのだ。自分のパートナーの元彼に髪を整えさせる、普通なら嫌がるのだろうが湊音はどうってことはないし、李仁もどうも思ってもない。
「ねぇ、こないだ言ってた自宅でも簡単に白髪染めできるキット……売ってる?」
「あ、うん。あるよ」
「二つセットで」
いつもは二人ともここで染めるのだが何の気の回しなのか。
「ねぇ、染め方のコツとか教えて」
湊音は大輝と談笑する。なかなか友達のいない彼にとっては少し気の知れた話し相手になっている。
たまに李仁の悪口も言い合うこともあるが不思議な関係である。