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豪は寝室に入り、フウーっと大きく息を吐き切った後、サイドチェストの一番下の引き出しを開けた。
中にしまってある紙袋を、少しの間、想いを馳せながら見つめる。
奈美と繋がったあのエロ系SNS。
初めて出会った彼女の印象や、口淫だけの関係だった頃に二人で過ごした時間。
互いの思い違いで会えなかった時間。
正式に付き合い始め、ベイエリアへドライブに行った時の事や、つい先ほどイルミネーションを見に行った時の事……。
今日はクリスマスイブ。
豪はこの日、奈美にどうしても伝えたい事がある。
ある意味、人生の掛けのようなものだ。
(吉と出るか凶と出るか。想像つかねぇな。でも奈美の反応を考えたら、吉から大吉になるはず……)
彼は滑らかな手触りの紙袋を丁寧に取り出し、リビングにいる奈美の所へ戻った。
***
「奈美。これは俺からのクリスマスプレゼントな」
国内時計メーカーの紙袋から、十センチ四方の箱を二つ取り出し、一つを奈美に手渡す。
豪が彼女に贈ったのは、メーカーで一番売れている、メンズのクロノグラフのソーラー電波腕時計をカスタマイズしたもの。
以前、アウトレットで彼女の腕時計を購入した際、このカスタマイズ腕時計のパンフレットを見つけ、今日に間に合うように、一ヶ月以上前にネットでオーダーした。
「え? 腕時計?」
奈美は箱を開き、ポカンとした表情を浮かべた。
「前に言っただろ? 次に探すのは奈美の仕事用の腕時計だって。それに俺も同じ時計を購入している」
豪は自分用に購入した箱を開けると、奈美は目を細め破顔させた。
「この腕時計すごい! 豪さんとお揃いなんだけど、さり気なく違うのがいい! 豪さん、すごく嬉しい! 本当にありがとう!」
本体とバンドはステンレス製で形は全く同じだが、フェイスを囲むリング部分は、彼はガンメタリック、奈美はピンクゴールド。
文字盤は豪がチャコールグレー、奈美は薄めのブルー。
世界の都市が記された文字盤を縁取るリング部分は、彼が黒、彼女は白だ。
二つの腕時計で同じにしたのは、時針と分針はシンプルに白、秒針は赤、オプションで竜頭(りゅうず)の部分に、小さなダイヤモンドを埋め込んでもらった。