テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【ワトソンの回想 4】
教会の扉は、半ば開いていた。
中は暗い。
外の光が差し込んでいるが、
奥までは届かない。
———
足を踏み入れる。
石の床は冷えている。
音が、吸われる。
———
「失礼する」
私が声をかける。
しばらくして、奥から人影が現れた。
———
「ワトソン」
———
名を呼ばれる。
神父だった。
———
思っていたよりも若く見える。
だが、どこか疲れている。
それが顔ではなく、
動きに出ていた。
———
「来てくれて助かる」
———
握手を交わす。
手は冷たい。
———
「手紙を読んだ」
「そうか」
———
それだけだった。
続けようとする気配はあるが、
言葉が出てこない。
———
「ここは、静かだな」
私が言う。
———
「そうだな」
———
神父はうなずく。
だが、視線は私を見ていない。
少し外れている。
———
「例の件だが」
私が切り出す。
———
神父は一度、口を開き、
それから閉じた。
———
「事故だ」
———
短く言う。
———
「だが?」
———
沈黙。
———
神父は、わずかに首を振る。
———
「いや……」
———
それきり、言葉は続かない。
———
ホームズが一歩前に出る。
———
「顔色が悪いな」
———
神父は苦笑する。
———
「そう見えるか」
———
「見える」
———
短いやり取り。
———
「この村では」
神父が言う。
———
そこで止まる。
———
「どうした」
私が促す。
———
「いや、まだ早い」
———
それだけだった。
———
遠くで、音がする。
水の音だ。
———
さきほどよりも、はっきりと聞こえる。
———
神父は、その音に耳を傾けている。
———
「聞こえるか」
———
「川か」
———
神父は、ゆっくりとうなずく。
———
「そうだ」
———
それ以上は言わない。
———
教会の中は静かだった。
外よりも。
———
それでも、
音だけは消えなかった。
すかいお~あ@毎日投稿&猫化?
けだま15号🍓🐾໊