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海浜公園を後にした二人は、商業施設内のイタリアンレストランに入った。
間接照明を使った店内は落ち着いた雰囲気。
店の奥は全面ガラス張りの窓になっていて、お台場の夜のパノラマが一望できる。
「わぁ! レインボーブリッジが…………目の前にある……!」
奈美は、美しくも壮大な夜景に感動しているようだ。
案内された席も、眺望が抜群にいい席。
新鮮なハーブを使ったサラダやウニのクリームパスタ、和牛のトマト煮込みや温泉卵を使ったカルボナーラ風のピザなど、美味しそうな料理が並び、夜景とともに堪能している。
二人は、いつしか鵠沼海岸へドライブに行った時の話題になっていた。
「あの時もイタリアンレストランに行ったよな」
「うん。オーシャンビューで、景色が綺麗だったね」
奈美がフワリと笑いながら、食事を続けていた。
テーブルにデザートとコーヒーが運ばれた頃になると、奈美は、先ほどと一転し、俯き加減で黙々とティラミスを口に運んでいる。
「奈美? どうかしたのか?」
豪は彼女の様子が気になり、気遣った。
「だって……だって…………すごく……嬉しいからっ……」
今にも泣きそうな表情なのに、ぎこちなく笑っている。
彼はそのまま、奈美の様子を見つめていた。
「豪さんが、海へドライブに連れて行ってくれた日、お昼食べてる時に『今度は都心のベイエリアに夜景を見に行ってみるか?』って言ってくれて……。でも私の中では『いつ叶うか分からない、確約のない約束』って思ってて……」
何かを思い出したのか、奈美のアーモンドアイから、雫が頬を伝い落ちていく。
バッグからハンカチを出して目元を押さえ、彼女が持っているそれを抜き取り、豪の手でそっと涙を掬い取った。
「けど、豪さんが約束を叶えてくれたから…………すごく……嬉しくて……」
「あの約束、俺は忘れてない。ドライブに行った時、俺は、ベイエリアに行く頃には、奈美が彼女になってくれたら……って思ってたし、それが無理ならば、ベイエリアで奈美に想いを伝えるのもいいかもしれないって、考えてたくらいだからな」
彼は両手を組み、テーブルに肘を突きながら、真剣な眼差しを奈美に向ける。
彼女が顔を上げて、瞳を微かに見開くと、豪が大好きな奈美の笑顔の花が、少しずつ咲き始めた。
「豪さん。約束を叶えてくれて……本当にありがとう……」
豪も奈美に願いを叶えてもらい、心からの気持ちを彼女に伝える。
「こちらこそ……本当に…………ありがとう」
彼は、残りのデザートとコーヒーを噛み締めるように味わった。