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レストランを出た豪と奈美は、海浜公園の駐車場に戻り、予約していたホテルへ向けて車を走らせた。
これから奈美と一緒に一夜を過ごせるのかと思うと、彼の気持ちが昂っていくのを感じている。
今日は豪のマンションではなく、お台場のシティホテルで一夜を過ごす。
大好きな彼女を、思う存分に抱くのだ。
***
地下駐車場に車を止め、一階のチェックインカウンターで豪が手続きをしている時、奈美はロビーのソファーに腰掛けていた。
ポワンとした表情で、音に耳を傾けているようだ。
彼も耳を澄ますと、ラウンジから美しいピアノの曲が奏でられている。
どこかボケっとしている彼女に近付きながら、豪は奈美を呼んだ。
「何ボーっとした顔をしてるんだ?」
奈美は、ラウンジから聴こえてくるピアノ曲を聴いていたと言う。
このピアノ曲は、彼が子どもの頃に聴いた事があった曲だ。
正確に言えばピアノではなく、テレビゲームなのだが。
親戚の兄ちゃんが、オスのペンギンとメスのペンギンが出てくるパズルゲームのようなやつを、テレビゲームで遊んでいた時に、この曲をアレンジされていたものが流れていたのだ。
その事を彼女に伝えると、意外、と言いたげな表情を見せた。
あのペンギンのパズルゲームは、今の時代で言うレトロゲームと呼ばれるものらしい。
「なぁ奈美。このピアノ曲、何て曲名なんだ?」
「この曲は……サティの…………」
ラウンジで流れているピアノ曲のタイトルを聞いているだけなのに、奈美は焦ったような、困ったような顔をして、なぜか顔まで真っ赤にさせている。
豪は彼女を揶揄いたくなり、敢えて甘く囁く。
「曲名を聞いているだけなのに、何をそんなに顔を赤くしているんだ?」
「曲の名前は……あっ……後で教えるからっ! それよりも早く部屋に行かないとっ……」
彼女が自分の表情をごまかしているのか、普段よりも早口になっている。
豪は奈美の髪を撫で、早く二人きりになりたい事もあり、部屋に行こうか、とエレベーターへと向かった。