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マサファーは悟の父に言われた通り、寮の前についた。ボロボロで苔が生えており、全く手入れされていない壁だった。
真っ黒な壁の中にある扉を開くと、廊下は崩壊しており床が抜け落ちている。これでは先に進めない。
どうやって行こうか悩んでいたら、美人の女に声かけられた。真央だ。
「またお会いしたね。戻ってきてくれて嬉しいわ」
「ああ、俺もだよ。会いたかったぜ」
彼女とは教室で会ったあの時、すぐに断った。流石に結婚は荷が重すぎるし、責任がのしかかってしまう。自分には無理だった。やはり結婚よりフリーになったほうが楽だ。
とはいえ、真央の考えもわかるので、そう答えた。彼女はそんなことも知らずに、マサファーにべったりとくっつく。
「フフッ。今日もお話ししましょうね」
そう言って背中から蜘蛛の足が生えてきた。繋いでいる手にもたくさんの毛が生えて、爪も鋭くなっていく。
彼女は黒い雨に当たったせいで、蜘蛛女になってしまった。子供は背中におぶっていて、小さいガキなのに全く泣かない。大人しい子だった。
子供の頭を撫でてやると、ケラケラと不気味に笑ってくる。
「この子、可愛いでしょ?そうだ、寮の部屋に案内するわ。来て」
真央は蜘蛛の足を長くして地面に足をつけ、その状態で階段を上る。マサファーはその後に続く。
それからどれくらいかして、寮の部屋の前に着く。当然一緒の寮にしないかと誘われたが、それよりも他にどんなメンバーがいるか確認したかった。寮の部屋を探索する。
一つの部屋を開けると、メガネをかけた太ってる男がいた。人間だ。どうやら黒い雨に一度も当たっていないようだ。悟と同じか。
「ひっ!化け物!」
近づいてきたマサファーの姿を見て震えながらそう言う。こう言われても仕方がない。
頭には猫耳が生えているし、尻尾もある手は肉球がついてるし、髭も生えている。こんな格好を見ても人間とは思わないだろう。敵意のないことを伝える。
「お前を殺そうと思ってないから心配するなよ。ただどんな人がいるか確認したいだけ」
「そ、そうだったんだ」
ほっとした表情を浮かべる。これは話しても良さそうだ。
「それで他に誰かいるのか?」
「人間が二人いるよ。一人は明日香っていう子」
「へぇ……。その子はどこにいるんだ?挨拶したいな」
「あー、その子外に出たっきり帰ってきてないよ」
「そうなんだ」
「もう一人ずっと引きこもりの男の子がいて、篤人って子。隣の部屋にいるよ」
「教えてくれてありがとう」
手を振って隣の部屋に入ると、ずっとパソコンをいじっている男がいた。
この扉は鍵が壊れていて扉が閉められないので、出たり入ったりは容易にできる。
「よし!また勝ったぜ!」
どうやらゲームをしているようだ。夢中になりすぎて、我を忘れて吠えまくっていた。声をかけにくいが、仲良くしなければ。声をかける。
「少しいいか?」
「ひっ!だ、誰!?モンスターだ!僕がゲームの世界の時のように殺してやる!」
「待ってくれ。ただ挨拶しにきただけさ!」
「そう言って僕のことを殺そうとするんだろ!この正義のヒーローが倒してやる!」
どうやらゲームをやりすぎたせいで、現実とゲームを区別できていないようだ。おもちゃの剣を握りしめていた。
彼の頬に手を当てて、説得を試みる。
「俺はモンスターじゃない。人間だ。目を覚ますんだ、馬鹿たれ」
マサファーは猫耳と尻尾を瞬時に隠し、人間を装う。すると彼は納得したらしく、口をワナワナと動かし頭を抑えて絶望していた。
「すまねえー!お前のことモンスターに見えちまった!誤解してしまい、申し訳ない!!」
「そんなに感情的にならなくていいぞ」
「おう、そうか!俺は篤人だ。隣の寝室にいるのは夏人だ。人間同士仲良くして行こうぜ」
「ああ、そうだな。会いてる部屋はないか?」
「会いてる部屋ならこの部屋の前にあるぜ。使えよ」
「教えてくれてありがとな」
にこりと微笑んで手を振り、そのまま目の前の部屋に入る。清潔感あふれる部屋で、壊れている場所はない。埃もほとんどなく、綺麗で掃除されているようだ。
マサファーはベッドの上で横になり眠りついた。そして猫耳と髭、尻尾は消えてなくなり目も黒くなった。人間の悟に戻ったのだ。
「ここはどこだ?ラーメン屋じゃない?」
記憶が飛んでいてここがどこなのか分からない。確かラーメン屋でラーメン啜ってそこから記憶が存在しない。パニックになって、頭を掻きむしりながら発狂する。
とはいえ我を忘れてはいけない。深呼吸をして、気持ちを落ち着かせていく。
玄関を開けると、目の前に蜘蛛の姿をした女が立っていた。悟を追いかけてきた変なやつだ。殺されたくないから逃げなければ。
窓から逃げようとしたら蜘蛛の糸を出されて捕まってしまう。
「捕まえた。さあ、一緒にお話ししましょうね!」
「嫌だ!僕はお前の父親になった覚えはない!」
「ええ!?夫になることを承諾してくれたのに!どうしたの?」
どうやらもう一人の夫はこいつの恋人になることを承諾したようだ。冗談じゃない。
しかし彼女の輝く緑色の目を見たらどうしても断りにくい。仕方なく承諾する。ハグされた。
「うふふ。大好きよ、マサファー」
「マサファー……?って誰?」
知らない人の名前が出てきて戸惑ってしまう。目をキョロキョロさせて、パニック状態。もしかしたらもう一人の自分の名前なのかもしれない。
そんな状態にも関わらず、愛は盲目というから連れられてしまう。
「冗談はやめてよ。さあ、一緒にお話ししましょうね」
そう笑いながら言われて、ドキドキしながら彼女の寝室に入る。それから二人でゆっくりと過ごした。