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成人式を迎えた日、美空は大事な話があると伯父に呼び出された。



(あらたまって、何の話だろう?)



そう思いながら、美空はいつになく真剣な表情の伯父の前に座った。

その時、伯父の口から出た言葉は、信じられないものだった。



『美空のお父さんは、美空の本当の父親ではない』



突然そう告げられた。


美空の頭は、一瞬にして真っ白になった。

それから伯父は、そのいきさつを丁寧に説明してくれた。



美空の父と母は、高校の同級生だった。

母は高校卒業後、東京へ出て就職したが、未婚のまま妊娠してしまう。

子供の父親は妻子ある男性で、妊娠を告げると彼女の元を去ってしまった。

しかし、美空の母は子供を産む決意をし、実家へ帰った。

すでに大きくなり始めていた娘のお腹を見て、祖母は受け入れるしかなかったようだ。

もちろん最初は反対したようだが、娘の揺るぎない決意を見て、説得を諦めた。


出産までの日々を実家で過ごしている間、美空の母は偶然父と再会した。

妊娠五ヶ月の頃だったようだ。

それを機に、二人は友達として頻繁に会うようになった。

そして、臨月を迎える頃、二人は互いに惹かれ合うようになっていた。

そこで、父が母にプロポーズをしたのだ。

「自分が子供の父親になるから」と……。


実は、父は学生時代から母に想いを寄せていた。その気持ちは、母が東京へ行った後も変わらず続いていた。

そして、美空が生まれる少し前、二人は入籍した。



伯父からその話を聞いた時、美空は、伯母が自分に冷たかった理由がなんとなく分かったような気がした。

美空の母は不倫をしていただけでなく、未婚の母になることを選んだのだ。おそらく伯母は、同じ女として母の選択が理解できなかったのだろう。

不倫をした女性が義理の弟と結婚し、血の繋がらない美空を実子として迎え入れる。

その状況に、伯母は大きな抵抗を感じていたのではないだろうか? 美空にはそう思えた。


その後、二人はあっけなく事故で亡くなってしまった。そして、血の繋がらない姪を伯父夫婦が引き取ることになった。

伯母の気持ちを思うと、美空は申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。

そして、事実をすべて知った上で美空のことを受け入れ、両親が美空のために残した財産を守り、優しく接してくれた伯父に対しては、感謝してもしきれなかった。

だから美空は、これ以上伯父夫婦に迷惑をかけたくないと思っていた。これからの人生は、誰にも迷惑をかけずに自分一人の力で生きていく____そう決心していた。



父は美空にたくさんの愛情を注いでくれ、いつも優しかった。美空はそんな父のことが大好きだった。

母に叱られて泣いている時、父はいつも大きな手で美空を抱き締めてくれた。

だから、伯父から聞いた真実をすぐには受け入れられなかった。

そして大人になった今、美空は、母に対して複雑な感情が芽生えている。



(母は、優しい父を利用したのではないだろうか?)



そう考えた時、美空は深い苦しみに押しつぶされるような気持ちになった。

もし母が生きていたら、この気持ちを直接ぶつけられたのに……。しかし、もう母はいない。



(お母さんは卑怯よ! 私に重たい荷物だけ遺して、さっさといなくなっちゃうんだもの!)



美空は、泣きながら何度も何度も母に抗議した。しかし、母からの答えは返ってこない。

そんな思いを何度も繰り返しているうちに、美空はいくら抗議しても無駄だということを悟った。

その瞬間、美空の心は死んでしまったのだ。



『自分はこの世に生まれてきてよかったの?』

『不貞の末に生まれた自分は、幸せになる権利などないのではないか?』



そんな疑問が、次から次へと浮かんでくる。それゆえに、美空は恋愛に対して少し冷めていた。

同年代の女性たちとは違い、恋愛には何も期待していなかった。



この世に、永遠に続く愛などない____愛はいつしか形を変え、違うものへと変わってしまうのだ。



いつしかそんな風に思うようになった。


こうして彼女は、恋愛には関心を持てずに、いつの間にか淡々と生きるようになっていた。

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