コメント
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仁さん、明るいノリの人なのね~😆🎶 次のドラマのテーマ、気になります🤔
仁さんいいじゃーん❗️ざっくばらんで豪快で独身貴族謳歌してますっ٩(ˊᗜˋ*)وイェーイ🪩って感じでアハハっ❗️ 書類は「月夜のおしゃべり」でそこに登場する人達が題材なのかな?
悦子さんの書類気になる。もしかして🤔🤔🤔
___スターテレビ
港区にあるテレビ局に一人の男性が入って来た。
男性の名は神楽坂仁(かぐらざかじん)、45歳。彼の職業は小説家。ジャンルは主にミステリーとサスペンスだ。
20代の頃に権威ある文学賞を受賞、その後も数々の賞を総なめにし新作を出せばすぐにベストセラー入りする人気作家だ。
仁の小説は既に何作も映画やドラマ化されていた。
しかし最近では新たな活動域を増やしている。
一昨年たまたまテレビ局でディレクターを務める友人と飲んでいた時に酔った勢いで恋愛ドラマ原作の仕事を引き受ける。
その友人の名は野中悦子(のなかえつこ)。悦子は仁の大学時代からの友人で悦子の商社マンの夫・高太郎(こうたろう)も同じ大学の同期だった。
軽いノリで引き受けて作った不倫ドラマは大ヒット。それに味をしめた悦子から次々とドラマ原作の依頼がくる。現在放送中の三作目のドラマも順調な滑り出しを見せていた。
そんな中、仁はまた悦子に呼び出されてテレビ局へ来た。
仁の今日のスタイルはジーンズに黒のカットソー、その上にグレーの薄手のコートを羽織っている。髪は緩くパーマのかかった短めのスタイルで口の周りには無精髭、そしてサングラスをかけていた。
ジムで鍛えた筋肉質の体型に長身はかなり人目を引くタイプだ。そんな出で立ちの仁がコートを翻して颯爽とビルの中へ入って来た。
仁は受付まで進むとカウンターに肩肘をついてサングラスを外しながらニッコリして言った。
「どうもーーー!」
「キャーッ! 神楽坂先生! 今日もまたドラマの打ち合わせですか?」
「先生、昨日の『依子さんのディープな恋』最高に面白かったですっ!」
「サイコーだろう? ハハッ、そりゃそうだ、俺の作るドラマは世界一だからなぁ」
「もう先生ったら! 次の新作も頑張って下さい!」
「楽しみにしてますっ!」
「ありがとーーー」
仁は受付嬢二人にウインクをするとエレベーターへ向かった。
エレベーターで38階へ上がった仁は制作部のフロアへ直行する。フロア内部は相変わらず活気に満ちてザワザワとしている。
入口にもたれかかった仁はちょうど通りかかった若い女性社員に尋ねた。
「野中悦子ちゃんいる?」
「アッ、先生っ、こんにちは! 今呼んできますね」
女性は笑顔で応対するとフロアの奥へ向かい悦子に声をかけた。するとすぐに悦子がやって来た。
「よっ!」
「いらっしゃい! この前使った第三会議室で待ってて! あ、お茶は何がいい?」
「俺はいつもブラックコーヒーさ」
仁が前髪をかき上げながら気取って言うと、
「何気取ってんだか」
悦子は声を出して笑いながら自販機へ向かった。
仁は廊下の先にある会議室へ向かうと室内へ入る。
テーブルの上にバッグを置いた仁は窓辺へ行くと下を見下ろした。そこにはジオラマのような景色が広がっている。
「フッ、プラレールか? いやNゲージか?」
仁はそう呟くとテーブルへ戻って椅子に座った。
コンコン
ノックの後悦子が缶コーヒーを持ってやって来た。
「おいおい缶コーヒーかよ。俺はドリップ派だぞ?」
「しょうがないじゃない。コーヒーメーカー空っぽだったんだもん。みんな忙しいから誰も替えやしない」
「テレビ局ってぇところは普通のコーヒーも出せねーのかー?」
「美味しいコーヒー飲むときはカフェに行くのよ」
悦子がうんざりした様子で言ったので仁はシュンとしておとなしく缶コーヒーをプシュッと開ける。そして一口飲んだ。
「こんな恐妻で高太郎はよく我慢をしてるよ」
「あっらーお言葉ですけどうちはこれで20年うまくやってますぅー」
「ケッ…あいつが海外赴任しているから上手くいってるだけだろう?」
「はいはい結婚出来ない男のひがみを聞いているほどあたしは暇じゃないのよ」
「おっ? そんな事言っていいのか? 今や俺はヒットを立て続けに出している恋愛ドラマのカリスマ原作者だぞ?」
「はいはい感謝してますよー。まさか酔った勢いで頼んだ仕事がこんなにヒットを飛ばすなんてあたしだって思ってもなかったわよ」
「お前、俺を誰だと思ってるんだ? 俺はれっきとしてベストセラー作家だぞ! 色々な出版社からあんな依頼やこんな依頼が来ててんてこまいしているなかなか時間が取れない大先生だぞ! なのにお前のおままごとに付き合ってやってるんだからな!」
「だから感謝してるって言ってるじゃん」
悦子は口を尖らせて言った。
「ったく今度高太郎に電話してやる! 旦那がニューヨークなんかに単身赴任してるから嫁が好き放題やって俺をこき使ってるってな」
「そんなのうちの人に言ったって無駄よ。きっと『悦子は何を言っても聞かないから』って笑うだけだわ」
悦子はフフッと笑った。
「ちぇっ、大体45にもなってラブラブ夫婦っていうのが胡散臭すぎる。夫婦っていうのはなぁ、もっと紆余曲折があってあんなドロドロやこんなドロドロがあるのが普通なんだよ」
「はいはい、結婚出来ない男のたわごとなんて聞いてる暇はあたしにはないのよ。なんてったって私は超多忙敏腕ディレクターなんだからさー暇なフリーランスとは違うのよー」
「ハッ? 誰が暇なフリーランスだっ?」
仁はむくれた顔をしながら再び缶コーヒーに口をつけた。
「で、話しってなんだ?」
「ここまで来たらわかるでしょう?」
「四本目?」
「あらー、仁ちゃんおりこうさんーそうでちゅよー」
悦子はパチパチと拍手をする。
「俺は今猛烈に忙しいんだ。書かなきゃいけない小説が山ほどたまっている。だから四本目はダーメ!」
「あら? ダメなのにわざわざ来たの?」
悦子はニヤリと笑う。
「い、いや、それはパソコンに向かってばかりだと運動不足だからそれを解消しようかなーと思ってさ」
「はいはい強がりはやめましょうねー。仁ちゃんが四作目に意欲満々なのはバレてるから。やっぱりそうだよねー作れば全部大ヒットを飛ばすんだから楽しくってやめられないわよねー」
「コホンッ、ま、まあそうだな」
仁はまんざらでもないと言った顔をする。
「で、今回はどういうテーマだ?」
「うん、じゃあ本題に入ろうか」
悦子は椅子を引き寄せて仁の前に座ると手にしていた書類を仁に渡した。