翌朝理紗子はとても気持ちのいい朝を迎えていた。
昨夜は早めに寝たので旅の疲れもすっかり取れた。
トーストとコーヒーの簡単な朝食を済ませると、掃除洗濯をしてから早速執筆に取り掛かる。
不思議とどんどんアイデアが溢れて来る。指が勝手に文字を入力する。
旅行前は枯渇しかけていた理紗子の想像力はすっかり回復していた。
理紗子は部屋に沖縄音楽を流しながらひたすらパソコンのキーを叩き続けた。その作業は正午近くまでノンストップで続いた。
時計がちょうど正午を回った時インターフォンが鳴った。
誰だろうと思いながら理紗子がモニターを覗き込むとそこには健吾が立っていた。
健吾はスーツを着てきちんとした格好をしている。これから仕事なのだろうか?
「どうしたの?」
「急で悪い。ほら、レトルト食品をあげるって言ってただろう? だから駅に行くついでに少し持って来た」
「忙しいのにわざわざありがとう。今開けるね」
理紗子がオートロックを解除した後、少ししてから健吾が理沙子の玄関まで来た。
健吾は大きな紙袋を二つ抱えていた。
「本当はまだいっぱいあるんだけれど歩きだとこれが限界だな。残りはまた車の時に持って来るよ」
そう言って袋をドサッと理紗子の足元に置いた。
中を見るとぎっしりと色々なレトルト食品が入っている。
「これだけでも充分よ、ありがとう。コーヒーでも飲んで行く?」
「魅力的な誘いだがもう時間がないんだ。そう言えば来週の火曜日って空いてる?」
「うん、特には予定はないけれど?」
「じゃあ美和さんの店に行こう。そろそろパーティーの服を準備しないとだからな」
「え? 服だったら自分で用意するのに」
「いや、そういうのは俺が全て用意するって言ったろう?」
「でも沖縄でも全部払ってもらっちゃったし」
「それは気にしなくていいよ。それに美和さんの店の服を君が着てくれると彼女の店の宣伝にもなるんだ。だからマジで気にするな。じゃあまた近くなったら連絡する!」
健吾は微笑んで手を挙げるとエレベーターへ向かった。
理紗子は思わずため息が出る。健吾は理紗子の為に一体どれくらいのお金を使うつもりなのだろうか?
理紗子は玄関を閉めると重たい紙袋を二度に分けてキッチンまで運んだ。
早速中身を取り出してみると、中にはパスタの乾麺とパスタソース、レトルトカレー、親子丼や牛丼の具が入っていた。
ちょうどお昼時だったので理紗子は早速パスタを食べてみる事にした。
(ラッキー! これでしばらくは家に缶詰めになっても飢えずに済むわ)
理紗子は上機嫌でフフッと笑う。
そしてパスタを茹でながら先ほどの健吾の姿を思い出した。
健吾はグレーのスーツに真っ白なワイシャツを着ていた。
ネクタイはしていなかったがボタンをはずした喉仏の辺りに男の色気が漂っていた。
健吾のスーツ姿を初めて見た理紗子は少しドキドキしていた。
(イケメンのスーツ姿って反則よね)
そう呟くと、フフッと笑ってパスタの茹で具合をチェックした。
昼食を終えた後また午後から少し執筆作業を続けてから、夕方になると理紗子は出かける準備を始めた。
今日は洋子と飲みに行く約束をしている。その前に美月出版へ沖縄土産を持って行こうと思っていた。
理紗子は担当編集者の磯山に直接お礼を言いたかったので出向く事にした。
家を出て出版社へ到着した理紗子は受付へ向かった。
受付には理紗子よりも少し若いとてもチャーミングな受付嬢がいた。名札には『内田』と書かれてある。
理紗子は内田に磯山雄介が会社にいるかどうかを尋ねた。
理紗子が『磯山』の名を告げた瞬間、内田が過敏に反応したように思えた。
もしかしたら彼女は磯山の事が好きなのだろうか?
(フフッ、こういうパターンも小説のネタになるわね)
理紗子が呑気にそんな事を思を考えていると内線電話を終えた内田が理紗子に告げた。
「只今参りますのでソファーにおかけになってお待ち下さい」
「ありがとう」
理紗子は笑顔で答えるとソファーまで行き腰を下ろした。
少しすると磯山がエレベーターから降りてきた。
「水野先生お帰りなさい! 沖縄はいかがでしたか?」
「ただいまー。今回は本当に色々とありがとうございました。あの、これつまらないものですがよろしかったら皆様で」
理紗子は買ってきた菓子折を磯山に渡す。
「わざわざありがとうございます。それにしてもすっかり日焼けしましたねー、沖縄を満喫されたようで何よりです」
「はい、最高の旅でした。いい刺激を貰えてどんどんアイデアが浮かぶので早速今朝から執筆を始めました」
「それは良かった、チケットをプレゼントした甲斐があります。いい作品が出来るのを期待していますよ」
磯山はそう言った後理紗子の首をじっと見つめる。
その時磯山は理紗子の耳の下にあるキスマークに気付いてしまった。
磯山は何ともいえない表情をしている。
磯山が自分の首の辺りをじっと見ているのに気付いた理紗子は、首に何かついているのかもしれないとさりげなく手で払ってみたが特に異変はなかった。
理紗子は不思議に思いながらも磯山に言った。
「じゃあこれで失礼します」
「あ、わざわざありがとうございました。執筆の方よろしくお願いします」
二人で会釈を交わした後、理紗子はビルの出口へ向かった。
磯山は理紗子のキスマークを見てかなり驚いているようだった。
(沖縄旅行に男性と?)
磯山は衝撃を受けたまま物思いに耽りながらエレベーターへ向かった。
そんな磯山の様子を受付嬢の内田が心配そうにじっと見つめていた。
理紗子は駅に向かって歩きながら、
(磯山さんなんか変だったな? どうしたんだろう?)
理紗子は不思議に思いながらも時間に遅れそうだったので慌てて駅へ向かった。
コメント
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沖縄旅行から帰宅後は絶好調.🎶 アイディアがどんどん浮かび、執筆が進む理紗子ちゃん....💻️ 健吾さんとのドレス選びや パーティー出席も楽しみですね👗👠♥️✨ 旅先で 彼につけられたお印🌺💋にまだ気づいていないようだけれど🤣w これ💋を知った時の理紗子ちゃんの反応は如何に....⁉️💕🤭
健吾さんの悪い虫がつかないように💋マークつけたのね😄
まさかお印🌺付けられるとは露知らず〜🤭髪下ろしてればまだね🤭 美和さんのところでのドレス選び𝔻𝕒𝕥𝕖💕でどんな理紗子ちゃんᯒᯎ″*❤︎を醸し出すのか、そしていつ理紗子ちゃんはお印🌺に気付くのか楽しみ♡ぃっぱぁぃᕽᒾ♡