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テーブル席に座っていたのは、小中学校時代の同級生、音羽奏。
そして、一緒に連れ立っている男性は、『おにーさん』だった。
「美花! すっごく久しぶりなんだけどっ!」
奏は、破顔させながら席を立つと、美花に近付き、両手で握手をしてきた。
「あっ……ああ! かなチー、久しぶりっ……」
美花が困惑を滲ませた笑みを浮かべた後、奏と一緒にいる『おにーさん』をチラリと見やる。
(…………え? かなチーの恋人って…………おにーさん……なのぉ……?)
彼女が内心愕然としながら、幼なじみと恋人らしき人物を注視してしまう。
厚めの前髪から覗く、目力のある漆黒の瞳と、黒いストレートのロングヘアの奏は、変わらずクールビューティのまま。
(やっぱり……あのおにーさん、カッコいいから彼女がいても不思議ではないよねぇ……。しかも、私の親友が、おにーさんの恋人みたいだし……)
美男美女で、お似合いのカップルだよねぇ、と美花の心に暗雲が立ち込めてしまう。
(こんな事を考えてる私って…………)
──私……親友に嫉妬している……?
美花は、封じ込めていなければならない恋心が、少しずつではあるけれど、芽生えている事に気付いてしまった。
恋愛だけは、絶対にしてはいけない、と、ずっと自分に言い聞かせてきたのに。
誰かを好きになり、恋人同士になったとしても、自分も、相手の男性も、後々苦しくなるのは分かりきっている事。
(私……あのおにーさんの事を──)
それでも美花は、落ち込む気持ちに負けないように、何とかして笑みを作った。
母の雪が、どこか悲しそうな表情をしている様子の美花を見て、カウンターの奥で目を細めている。
(まったく…………お母さん、さっきからニマニマしてて、何か隠してるっぽいっ!)
美花は、顔をムスッとさせながら、心の中で毒付く。
「お母さん! 何を笑っているかなぁ!?」
彼女の言葉を聞いた『おにーさん』は立ち上がり、奏の隣に寄り添い、美花と向かい合った。
「初めまして、美花さん。奏から美花さんの事は伺ってます。奏の恋人の、葉山と申します」
「あ………ど……どうも……」
美花が、困ったような面持ちで、ぎこちなく言葉を漏らすと、ダークネイビーのスーツに身を包んだ『おにーさん』は、スーツの上着の内ポケットから名刺入れを取り出し、名刺を一枚抜き取ると、彼女に差し出した。