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──ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツ 営業課長 管楽器リペアラー 葉山 怜
(ん? 名刺…………違う?)
美花の頭の中が、クエスチョンマークで埋め尽くされていく。
「改めまして、奏の恋人の、葉山怜と申します。アニキが、こちらのお店によく来店しているそうで」
「え? アニキ…………? って事はぁ……」
『おにーさん』からもらった名刺と、『おにーさん』の顔立ちを、美花は、交互に視線を向けている。
彼女の目の前にいる『おにーさん』は、顔立ちが何となく鋭い感じがするのは、気のせいか。
ワケがわからない、と言わんばかりの美花を、母の雪、奏、奏の恋人、怜が笑いを堪えている。
「ふっ……ふ…………双子ちゃん!?」
「そうなのよ。私もビックリよ! 奏ちゃんが男の人を連れてきてさ。あのお客さん、奏ちゃんの彼氏だったんだ、なんて思って聞いてみたのよ。そしたらさ、彼氏さんが『それは、僕のアニキですね』なんて言うモンだからさぁ」
雪がドヤ顔で種明かしするも、美花は騙された感が拭えない。
「俺とアニキは一卵性だから、よく間違われるんですよ。まだ付き合う前、奏にも間違われて、突っかかるように言われたなぁ」
「ちょっ…………怜さん! 恥ずかしいんだけどっ!」
怜が、美花に言いつつ、親友を揶揄うように意地の悪い笑みを覗かせると、奏は照れ笑いを見せながら、恋人の腕をポンッと軽く叩く。
「それにしても、双子ちゃん、なんて可愛い言われ方をされたの、俺、初めてだなぁ」
怜が、顔を僅かに赤くさせながら、後頭部を撫でている。
「美花。奏ちゃん、彼氏さんと結婚するんだってさ」
「え? そうなの!? おめでとう、かなチー!」
美花は、奏の両手を取り、キュッと握ると、親友に柔らかく微笑まれた。
「来月から、豊田にある怜さんのマンションで同棲するんだ。今月の下旬に、ピアノのコンペティションがあるからさ。今は私も本番が近いから、土曜日しか彼と会ってないんだけど、彼が、せっかくだし、奏の親友に報告しに行こうって言ってくれて……」
「そうだったんだ。報告しに来てくれて、ありがとう! おにーさんの弟さん……あ、いや……葉山さん、おめでとうございますっ」
奏と怜にそれぞれ眼差しを向けた美花は、小さくお辞儀をした。
(そうだっ! それなら二人の結婚祝い……)
美花が、奏と怜の結婚祝いを何にするか決めた瞬間、店の格子戸がガラガラと開かれる。
入り口に目を向けた瞬間、彼女の鼓動が大きく脈を打ち、目を見開かせた。
コメント
1件
びっくりしたわ〜😆