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「んぅ…………ふぁっ……」
重なり合った唇から、美花の吐息が零れ落ち、漆黒に染まった地面に滴り落ちる。
「美花……」
涼しげな目元をトロンとさせた圭が唇を離し、美花の名を囁くと、丹念に唇を貪ってきた。
微かに開いた美花の唇に圭の舌が滑り込んでくると、彼女の肩がビクッと震え、彼は華奢な身体を掻き抱く。
圭の舌が、口腔内を蹂躙するように蠢き、執拗に這い回る。
「んうぅっ……」
苦しげに息を漏らす美花に、圭は彼女の下唇をそっと食み、焦らすように顔を離した。
目の前にいる圭は、艶を放っている大人の男。
今まで見た事のない、圭の幽艶な面差しに、美花の心臓が強く突かれた。
「美花。今日は……………君を帰したくない」
「……え?」
吐息混じりに圭から伝えられ、美花は瞠目してしまう。
(それって…………もしかして……)
目を見開かせたまま、彼女は言葉を失いつつも、彼の瞳から逸らせずにいる。
美花の考えが表情に映し出されたのか、圭は節くれだった手で長い髪に触れてきた。
「美花が思っている事はしない。ただ…………俺は今夜…………ずっと……君と一緒にいたい」
「…………」
羞恥と熱が美花の顔に集まり、いたたまれなくなった彼女は、瞳を伏せる。
「美花は…………俺と一緒に過ごすのは…………嫌か?」
「…………」
美花は黙ったまま、おずおずと首を横に振って否定する。
嫌なんて思わない。
寧ろ、好きな男の人と、まだ一緒にいられるのは嬉しいに決まっている。
ただ、なぜだろう、漠然とした不安が美花に襲い掛かり、彼女はすんなりと答えられずにいた。
もしかしたら今日、一晩中圭と過ごしたら、美花の左腕に残る自傷行為の痕跡を、見られてしまうかもしれない、と彼女は思う。
美花の根深い心の傷を圭に晒す勇気が、彼女はまだ持てない。
けれど…………やっぱり好きな男の人と過ごしたい気持ちが勝ってしまう。