この作品はいかがでしたか?
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「はぁ……はぁ………」
皐月賞5日前。
私はただ、トレーニングコースを眺めていた。
もう少しで門限の時間だ。寮に戻らなくては、ヒシアマゾンにこっぴどく叱られることだろう。
「………」
───ただ、ユリノテイオーを眺めていた。特に意味もなく。
新聞紙一面に大きな文字ではられた『商店街通り魔事件』の文字。
それが相当ショックだったのだろう。ユリノの走りは随分変わった。
今までの走りは迫力のある見事な走りだったが、今のユリノの走りは何処か弱々しいような感じがする。
「………どうしたの?ルドルフちゃん」
後ろから自分の名前を呼ぶ声がして振り返る。
そこには、もう帰るであろうマルゼンスキーの姿があった。
マルゼンは私を不思議そうに見つめていた。こんな時間まで私が学園に残ってるのはそんなに不思議なことだろうか。
「……ああ、マルゼンか」
「もう少しで門限の時間よ。そろそろ帰ったら?」
「…………」
マルゼンは、私が座っているベンチの隣に腰掛けた。
私は下を向いて俯く。
「……心配なの?ユリノちゃんが」
「………!」
図星みたいね、とマルゼンが笑う。
すると、マルゼンが立ち上がった。
「そんなに心配なら、話しかけたりしたらどう?───ユリノちゃーん!」
マルゼンの声が聞こえたのか、ユリノはその場に止まり、こちらを振り返った。
遠くからでもわかるほど、悲しい目をしていた。
そんなマルゼンは、笑顔で手招きをする。
優しく、包み込むような笑みで、ユリノを見つめて。
「………マルゼン先輩?」
ユリノはゆっくりとこちらに歩いてくる。
疲れているのか、激しく息を乱しながら。
マルゼンは自分が座っていたベンチにユリノを座らせた。
ユリノちゃんがあそこまで無理をしてトレーニングをする理由は、正直分からない。
“無敗の三冠”なんて大層な夢。
そんな大きな夢を馬鹿にせずに、一生懸命指導してくれた兄を殺されそうになったのだ。私だったらきっと、走ることを辞めてしまうだろう。
「兄さんは、僕のことを馬鹿にしませんでした」
私が渡したお茶を片手に、ユリノちゃんはゆっくりと話し始めた。
「無敗の三冠という大きな夢。バカみたいな夢です」
そう言ってユリノちゃんはバカにしたように言った。
何も面白くないのに。立派な夢なのに。
「無敗の三冠ウマ娘になりたいと言った時は、自分で自分が馬鹿だと思いました。僕に無敗の三冠は無理だと思っていたのに、何故か口から出た言葉。自分が気持ち悪いと、初めて思いました」
「…………何故だ?」
悲しい目だった。
ユリノちゃんの弱音に、ルドルフちゃんは険しい顔をして問う。
「……今まで、僕は無敗で勝ち続けてきました。だけど、別に何バ身と大きな差があった訳ではない。ハナ差や数センチ差など、全て誤差です。派手な着差でもないから、今までのレースで勝っても、『たまたま勝っただけ』なんですよ」
「……どうしてそう思うの?」
「…………白毛のウマ娘が中央で勝ったことは、僕以外誰も成し遂げていないから」
ユリノちゃんはそう言って立ち上がった。
「だから、僕が勝つことなんて誰も望んでなんかいない。僕が消えたところで何万人の人は気にしないし、悲しまない、勝つ意味なんてないんですよ」
「………そう言って、諦めるのか?」
ルドルフちゃんは歩き出したユリノちゃんを呼び止める。
ユリノちゃんは黙ってその場に立っていた。
………ユリノちゃんの目から大粒の涙が零れた。
「────……僕は希望を見失っただけですよ」
そう言って、ユリノちゃんは走り去った。
お疲れ様です!えびふらいです!( ¨̮ )
ウマ娘、とうとう一周年ですね!(ちょっと過ぎた)
タンホイザちゃんがめっちゃ可愛いです!
まぁ、あんまり言う事はないんです(’ω’)ファッ!
今回はこの辺で!さよならー!
コメント
2件
頑張ってください!!