テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
18話 魔法薬草リベンジ
昼
ふっくらは丸い体を揺らしながら
前回割れた鍋の前に立っていた
短い脚がそわそわ動き
腹は緊張で前にふよっと突き出る
ふっくら
「今日は……割らない……!
絶対割らない……!!」
鍋は琶の魔法で直され
ひびだけが薄く残っている
琶が近づく
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が影を落とし
ふっくらがすっぽり入るほどの円を描く
琶
「……覚悟はいいか」
ふっくら
「薬草作るのに覚悟いる!?
そんな危険職だった!?」
ふっくらは鍋に薬草を投入する
しゅわぁぁ……と妙な音が広がる
色のついてはいけない方向に広がる泡
ふっくら
「ねぇこれ……前より……色が……」
琶
「無理だな」
(早い判断)
ふっくら
「まだ味見すらしてないよ!?」
琶
「味見する価値がない」
ふっくらは勇気を出して
鍋の中をのぞき込む
そこには
緑でも黄緑でも水色でもない
“説明できない色”が広がっていた
ふっくら
「……これ……飲み物っていうジャンルに入れていい?」
琶
「ジャンル外だ」
ふっくら
「ジャンル外!?」
(丸が震える)
鍋の中の液体が
かすかに動いた気がする
波でも風でも説明できない
“自発的な揺れ”
ふっくら
「い、いま動いたよね!?」
琶
「薬草が主張している」
ふっくら
「主張しないで!?
薬草はもっと静かに生きて!!?」
ふっくらはおそるおそる杓子を入れる
中の色がゆるく反転する
琶
「……飲み手を選ぶだろう」
ふっくら
「わたしは選ばれたくない!!」
そこへ風が吹き
鍋の中の煙のようなものがふわっと揺れた
その影が
ふっくらの丸い頭にのしかかったように見える
ふっくら
「やだやだやだ!!!
これ飲む人かわいそう!!」
琶
「飲む者は……いないだろう」
ふっくら
「じゃあ作業の意味どこ!?
なんで作ったの!?!?」
琶は真顔で言う
「リベンジだ」
ふっくら
「目的が“作ること”なの!?
成果は!?!?」
琶
「成果は……色だ」
(意味不明)
ふっくら
「色が無理なんだよ!!
色が無理って言ったんだよ!!」
鍋の中の色は
さらに深くなり
視界を拒むような“濃さ”になっていく
ふっくら
「ねぇ琶……これ……こわい……」
琶はわずかに目を細め
鍋の縁に爪を置いた
「……こわいなら、見なければいい」
ふっくら
「そういう問題!?
色の暴力から目をそらす感じ!?」
しばらく悩んだ末
ふっくらは結論を出した
「……これ、今日のところは
完成ってことでいい?」
琶
「いい。
完成だ」
ふっくら
「適当じゃない!?
いやでもこれ以上触りたくない!!!」
琶は淡々と報告書を書く
【魔法薬草:完成
色:無理
飲用:不可
性質:おそらく自立型】
ふっくら
「“自立型”って何!?!?」
(丸が限界)
琶
「読者が考えるだろう」
ふっくら
「読者に投げないで!!!!」
鍋の中の色が
ぼこり、と泡を一つだけあげた
誰もその意味を確かめようとしなかった