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19話 今月の紙芝居ニュース
夜
焚き火が
ゆっくり揺れる
ふっくらは
丸い体を地面に沈め
短い脚を折って座る
手にしたお菓子袋は
まだ開けていない
琶が
紙芝居の枠を立てる
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼は動かず
爪が紙をそっと押さえる
一枚目
魔王と
勇者が描かれている
向かい合い
立っているだけ
魔王の輪郭は細く
角が伸び
衣が揺れている
勇者は
見覚えのある顔
整った鎧
まっすぐな姿勢
ふっくらは
丸い目を少し細める
二枚目
二人が
口を開いている
だが
吹き出しも
文字もない
表情も
どちらとも読めない
琶は
無言のまま
次をめくる
三枚目
魔王の手が
わずかに上がり
勇者は
うなずいているように見える
しかし
会話の内容は
描かれない
何を話しているのか
何を決めたのか
まったくわからない
ふっくらは
お菓子袋を持つ手を
ぎゅっと握る
四枚目
二人は
背を向けている
どこへ向かうのか
何を終えたのか
それも
描かれない
ふっくらは
息をひそめる
「……話してた、よね?」
顔だけでそう言う
琶は
小さく首を動かすが
説明はしない
紙芝居は
静かに閉じられる
内容のない会話が
記録された夜
意味は残らず
絵だけが
そこにあった