用具室での一件以来。清一はまるでタガが外れたかのように何度も何度も自室に俺を連れ込み、自慰の延長みたいな行為を求めてきた。与えられる快楽に流されて断れない俺もどうかとは思うが、何故清一がこんな事をしてくるのか、理由を訊けていないのでわからないままだ。内容が内容なだけに問い詰めずらいし、どういったタイミングで訊いていいのかも判断出来ない。
用具室で清一の口から出た、『後悔』と言う単語が耳の奥でやけに残っていて、一歩前に出ようとする足が竦んでしまう。回数を重ね、悪い方向で慣れてきてしまい、『この先までいったら、どうなるんだろうか?』なんて事まで思い始めた俺は、もう終わってるとしか思えないが…… 本心なので言い訳も出来なかった。
「えっと…… 『男同士』『セックス』『方法』っと」
ベッドの上で背中を丸めて座り、自室内なのに頭から布団をかぶって、全身と共にスマホの画面も隠す。ノックもせずに部屋に入ってくる癖を改善しようとしない家族対策だ。前に一度、ムラッとした気分になった時にいきなり扉を開けられた事があったのが軽いトラウマになっている。幸いにして行為の前だったので互いに何事も無かったのだが、家族が退出するまでの間は気が気じゃ無かった。
「…… なーんで俺、こんなの見てんのかなぁー」
口元を隠し、ボソボソとこぼす。視線は画面をガン見し、前立腺だなんだといった知識を無駄に得ていった。
「すごいな……へぇ。……うわぁ、ちょっとコレは難易度高いよ」
最初はグダグダと独り言を言う余裕もあったのだが、色々なサイトの説明を読むうちに、段々と無言になっていく。結論として——
(これは無理、だな)
「あー!もう、何やってんだか」
頭から布団を被ったまま、ぽすんっとベッドに倒れ、上手いこと枕に頭をのせる。
ほんの二時間前くらいまで清一のベッドの上でまた行為に及んでいたせいもあってか、ノリと勢いでこんな事を調べてしまったが…… あんな事をシテ、本当に気持ちいいんだろうか?
少し、ほんの少しだけ気には……なる。なってしまう。言い訳かもしれないが、俺がそう思ってしまう事に、理由がなくは無いのだ。
『充は可愛いな、最高だよ』
毎度のように『愛の言葉かよ!彼女つくってそっちに言え!』とツッコミたくなる言葉を囁きながら、清一が執拗にお尻を触ってくるのだ。女性とは違って柔らかさの少ない男のケツなんか揉んでいて何が楽しいんだろう?と最初は思っていたのに、最近じゃちょっと気持ちがいい。
ローションでぬるつく指先で双丘の間にある蕾をゆるゆると撫でられた時なんかは、ゾクッとして背が反れた。流石にまだ指を入れられたりはしないのだが、清一がソコに触れてくるたびに、辛そうな、切なそうな表情をされて胸の奥をキュッと掴まれた感じがしてしまう。
無知で無垢な訳では無い俺は、流石に清一のしたい行為に見当がつく。
俺のナカに挿れたい……のだろう。
凶器に近いアレを?と思うとゾッとするが、気持ちは分からなくも無い。お互いに、性欲盛んで穴があったら挿れたいお年頃なのだしな。
清一との行為を体が勝手に思い出し、腹の奥がギュゥと疼く。真っ暗な布団の中、パジャマのズボンの中に手を伸ばし、お尻の方を触ってみたが——
自分でやってもさっぱり気持ち良くは無かった。
手を止めて、さっさとズボンの中から手を抜く。すっかり清一と一緒じゃないとイケない体になってしまった事に、心がモヤモヤした気持ちになる。
彼女が欲しい!
んでもって、えっちな事をしてみたい!
——なんて不純な欲望も、後者が先に満たされてしまったせいか、すっかり薄らいでいる。 清一が相変わらずモテていて、月に一回か二回程は『告白か?』としか思えない呼び出しを受けては消えたり、色目を使ってくる女子生徒が多い事にはイライラしたままだが…… 。
「…… 寝るか」
嫌な事を思い出して、ストレスを感じる時はパッと寝るに限る。眠い頭では悪い方向に考えてしまいがちなので、そうしよう。
隠していた頭を布団から出し、部屋の電気を消す。目覚まし時計の確認を終えると、俺は今日もまた、全ての事柄を先奥にしたまま眠りについたのだった。
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