テラーノベル
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辿り着いたのは、天井の高い広間だった。 窓がいくつも並び、重いカーテンが垂れ下がっている。
けれど、その外にはまだ、白い虚無が広がるばかり。
「ここが……?」
私は窓に駆け寄り、両手で押し開こうとした。
だが、どれほど力を込めても動かない。
「風は閉じ込められない」
そう言って、白い髪の少年が両手を開いた。
すると、部屋の空気がふっと震え、小さなそよ風が生まれる。
「……!」
私は思わず笑みを零し、その風の中へ飛び込んだ。
裾が広がり、髪が舞い上がる。
私の動きに合わせて、風は強く、大きくなっていく。
黒い髪の少女がその風を抱きかかえるように腕を広げると、
部屋いっぱいに気流が渦を巻き、カーテンが大きく膨らんだ。
「もっと、もっと!」
私は声を上げ、風に身を委ねて跳ねる。
まるで空を駆けるように、広間を舞った。
そのとき、窓の外が破れるようにして色を帯びた。
白い虚無に、青が広がる。
流れる雲が現れ、外の世界に初めて“空”が生まれた。
私は窓辺に立ち、広がる青を見上げる。
胸が高鳴り、笑い声が風と一緒に外へと溶けていった。
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