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青はどこまでも広がっていった。 赤い光も、川の青も、紫の空も、その上に大きな広がりを得て輝きを増している。
私の胸は軽く、身体がふわりと宙に浮かんでいるようだった。
「楽しかった?」
白い髪の少年が笑う。
「うん!」
私は両手を広げ、風に舞いながら答えた。
「やっと外に出られた気がする。……ありがとう」
「でも、行ってしまうのね」
黒い髪の少女が少し寂しそうに言う。
「風は止まれないもの」
私は笑って首を振った。
「流れ続けるから風でいられるの」
二人は顔を見合わせ、声を揃えて笑った。
「じゃあ、またね」
「次のお客さまを待ちながら、わたしたちはここにいる」
その笑みを最後に見て、私は窓へ駆け出した。
吹き込む風に身を委ねると、身体は軽やかに宙を舞い、空へと溶けていった。
館を振り返ると、重たい窓は開かれたまま。
カーテンが大きく膨らみ、白夜の館に新しい息吹が満ちていた。
雲の上を渡りながら、私は笑った。
ここからどこへ行くのかはわからない。
けれど、風はいつだって自由だから。