テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
恵
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「みっ…………美花ちゃん? 大丈夫!?」
美花に釣られたのか、瑠衣も名前で彼女に呼び掛けた。
「ごっ…………ごめんなさい。もしかして……美花ちゃんを嫌な気持ちにさせてしまった……かも……」
「…………」
瑠衣の、申し訳なさそうな言葉に、美花は無言のまま慌てて強く首を横に振る。
嫌な気持ちになってなんかいない。
瑠衣が美花の想像を絶する多くの試練を乗り越えて、大好きな夫と結ばれた事と、瑠衣の全てを受け止めている侑に、二人は出会うべくして出会った二人なのだろう、と思う。
と同時に、私にも、瑠衣の夫のように、自分の全て受け止めてくれる男の人に出会えるのだろうか、と考えたのも事実だ。
ふと、美花の胸中に、葉山圭の穏やかな微笑みが過ぎっていき、胸が張り裂けそうになってしまう。
「みかリン……?」
美花の心のポケットに忍ばせていた思いが、無意識に表情に出ていたのか、瑠衣は美花の顔色を伺っている。
「…………ルイルイみたいに、自分を丸ごと受け止めてくれる男性に…………私も……出会えるのかな……」
「…………え? みかリン……?」
美花は、ロキタンスキー症候群を患っている事、病気の事で過去に付き合っていた彼氏に侮辱される事を言われて振られ、それがトラウマになっている事を瑠衣に話そうか迷っている。
瑠衣も、話したくはないだろうと思われる内容を話してくれたし、公平ではないな、と思っていた。
美花がまつ毛を伏せ、残り半分ほどになったアイスティのグラスに目をやる。
グラスに付いた水滴が、表面を滑り落ちていくのを見ながら、美花は腹を括るように顔を上げた。
「私、好きな男の人がいるんだけど……」
瑠衣から衝撃的なエピソードを聞いたせいなのか、美花は、自分がどんな顔をしているのか分からなかった。
もしかしたら、思い詰めた表情になっているのかもしれない。
瑠衣は、そんな彼女の様子を、静かに見守ってくれている。
「実は私……」
美花は、濃茶の丸い瞳に眼差しを合わせ、自身の事をポツリ、またポツリと綴っていった。