テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#溺愛
桜咲かな
867
#溺愛
桜咲かな
662
#溺愛
桜咲かな
512
桜咲かな
627
森の中で気を失った佐久間は口の中の苦味と透き通るような声で目を覚ました。
「よかった、薬草が効いたみたい。私の声が聞こえますか?」
「……ここは?」
視界がまだぼやけているせいか、目の前にいる人の耳が長くて尖っているように見える。
「ここはエルフの里です」
佐久間はついに自分が異世界に来た事を認めた。
長く尖った耳に、人それぞれの顔には違った模様が描かれている。そしてベッドで寝ている顔を横に向けると窓が見えて、そこからは幻想的な巨大樹が覗いていた。
・ ・ ・
「目が覚めたのですね!あなたをずっと待ってました!」
「……いったい、何がどうなってるんだ」
エルフの里の里長である姫花《ひめか》に会うため、謁見の間に連れてこられた佐久間はまだ今の状況を掴めずにいた。
「私たちが森を探索している時に、倒れているあなたを発見して保護させてもらいました。そしたら……里長があなたに一目惚れしてしまったのです」
「……は?」
藪から棒の説明に佐久間は一瞬固まってしまった。しかし、気を整え直し考えた。
(本当にただの一目惚れなのか?何か裏があるかもしれない……)
姫花は緊張して恥ずかしがっているようだ。目を合わせるとすぐ逸らされてしまった。おしとやかな見た目をしていて、とても綺麗な女性だった。
「姫花様、このような素性も分からない人間に好意を持つのはどうかと思います」
ごもっともだ。どうやら姫花の意思に反対するエルフがいるようだ。ここはこの流れに乗るとしよう。
「その通りです。私のような者が里長であるあなたと関わりを持つことはできません。私は里を去ります、倒れていた私を助けてくださり感謝申し上げます 」
佐久間はお辞儀をして言った。
敬語の使い方が合っているかどうか分からないが、上手く演技は出来たはずだ。
「待ってください!……今里を出るのは危険です」
「……なぜです?」
その場の空気が一瞬で変わった気がした。
佐久間はそこから深刻な事態であることを感じた。
「……今、このエルフの里周辺に正体不明の魔物が現れたからです」
「魔物?」
「まだ姿は分かりませんが、空を跳ぶとても大きな魔物だそうです」
そうか、それは一大事だな。だが俺には関係ない。俺には戦う力なんてない、手を貸すこともできない。
つまり、俺はこの里から出られない。
「そこで提案なんですが、事態が落ち着くまではこの里で過ごしてはいかがでしょうか?」
そして里に滞在することになった佐久間は部屋で時間を持て余していた。
この世界と元の世界の時間はどうなっているのか、この世界は元の世界より早いのか、遅いのかそんなことばかり考えていた。
(俺はこれから何をすればいい?)
元の世界に帰る方法を探そうにもこの里からでることはできない。そうだ、この里の中で探せばいいんだ。エルフは寿命が長いから何か知っているかもしれない。
だけど帰った後はどうする?魔王でも倒すのか?結局どうせ死ぬなら元の世界に帰る必要なんてない。この里にいるのが一番安全だ。
(……そういえば、あいつらはどうなったんだ?)
もしかしたら一緒にこの世界に来てるのかもしれないな。
すると扉がノックされ姫花の声が聞こえた。
「サクマさん、姫花です。よろしければ一緒に里を見て回りたいのですが……どうでしょうか?」
「……わかった」
佐久間が扉を開けると目の前には姫花が立っていた。
「それでは行きましょう!」
エルフの里は樹海に囲まれた場所にあった。里の奥、丘陵《きゅうりょう》を越えた先に 一際目立つ巨大樹がある。
「あの里の奥にある巨大樹はなんだ?」
「あれは御神木です。御神木の守護の力によって里は災いなどから守られています。この地に魔物の瘴気が溢れても里は護られるでしょう」
瘴気がなんなのかは分からない。御神木には道が続いていた。あそが御神木への道だろうか。
「御神木には何がある?」
「勇者様が魔王と戦う前に残した祭壇があります。なにに使うかは分かりませんが、重要なものだそうです」
勇者が残した祭壇に少し意識が向くが、佐久間はそこまで気にしなかった。注目したのは勇者が魔王と戦う前というところだ。
「勇者と魔王はいつ戦ったんだ?それで魔王は倒されたのか?」
「サクマさんは何も知らないんですか?大体10年前くらいでしょうか。勇者様と魔王は相討ちになったとされています」
「……は?」
衝撃の事実に佐久間は驚きを隠せなかった。佐久間の世界に現れた魔王はこの世界から来たと思っていた。しかし、その魔王は既に倒されていたのだ。
「なら、この世界はいったいどこなんだ!?」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!