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「お兄さん起きて」
目を開けると二人の少年の一人、陸がいた。
「あの人、目が覚めたって」
魔法使いと戦った後、なぜかモンスターがいなくなり、直樹たちは気を失った魔法使いを連れて病院の中に入ることが出来た。病室に着くと、赤髪の女性の魔法使いがいた。
魔法使いは頭を下げて言った。
「あなたを危険な目に合わせてしまってごめんなさい」
彼女のせいで命を落としかけたのは事実だが、これは彼女の意思ではない。操られていたからだ。
「あなたのせいじゃないです。あの、全然大丈夫なんで気にしないでください」
彼女は、ほっと胸を撫で下ろして改めて向き直った。
「改めまして、私の名前はミコット・ナリーシファです」
「俺は神代直樹。えっと……怪我とかはない?」
「はい、何ともありません」
直樹はずっと聞きたいことがあった。けど、それは彼女にとって悪夢のような思いだったはずだ。そんな事を聞けるはずもなく直樹は飲み込んだ。
「……あなたは理解しているようですね、私たちの世界に何があったのかを」
ローズは直樹の表情を読み取って察したのか、少しずつ話し始めた。直樹は声を振り絞って言った。
「よければ聞きかせて欲しい……。ミコットの世界で何があったのかを」
・ ・ ・
異世界には魔王という世界を支配する事を企む存在がいた。そして、その魔王の企みを阻止する者、”勇者”がいた。
勇者は数年の時を経て魔王に挑んだ。しかし、神の力を得た勇者でも魔王にはあと一歩とどかなかった。
しかし、魔王は致命傷を負ったがすぐに回復して世界を支配した。それにより人は住む場所を失い、人は魔王に従う者達の食糧や奴隷のように扱われ、自らの意思で動くことすら禁じられた。
神はこの世界を見放した。神でもどうする事も出来なかったのか、もしくは神さえも支配されたのか。
──私は支配に抵抗できず、意識が飲み込まれていった
そして魔王の支配はこの世界にも留まらず、直樹の世界へと向かった。
「……これが私の世界で起こったことです」
「……」
このままだと、この世界も同じ悲劇を迎えてしまう。だが、直樹は人は救えても魔王は倒せない。怖い。死にたくない。この言葉が直樹を縛り付けていた。
魔王を倒せる可能性があるのは勇者だけだ。だけどこの世界には勇者はいない。この力が自分に勇者になれと言っているようで、戦えるはずがないのに心がプレッシャーに押しつぶされそうになる。
──理不尽だ。やりたくもない事をやらせようとして、戦う力だって無いのに。……こんな力、欲しくなかった。
ミコットはベッドから降りようとしていた。直樹は安静にするよう止めようとしたが、私を治療してくれた方にお礼が言いたいと言って断った。
すると突然、雷鳴のような音が響くのと同時に異世界の存在を感知する。何が接近するというよりも、何がが現れるような感覚だった。窓から外を見ると“門”から巨大な岩石のようなものが現れようとしていた。
「……そんな、あれは……!?」
直樹が岩石だと思ったものは巨大な城だった。これだけ遠く離れていても禍々しい程の気配を感知している。
異世界にあれほど禍々しい城はあれしか考えられない
「……魔王城」
そしてもう一つ、直樹は自分では気づかないほど小さな気配を感知していた。