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「じゃあ……成瀬先輩は、今、好きな人とかいるんですか?」
私の問いに、先輩の動きがピタッと止まった。少しだけ頬を染めて、先輩は辺りをキョロキョロと見回してから、私の耳元に顔を寄せた。
「……(小声で)顧問の、小谷先生」
「……え?! ええっ!!?」
「ちょっと、声が大きい!」
慌てて私の口を塞ぐ先輩の手が、少し震えている。
「引くよね……先生を好きとか」
「引きません! 小谷先生、お若いしかっこいいですもんね。えっ、いつから好きなんですか!?」
自分の悩みなんて一瞬で吹き飛んでしまった。成瀬先輩は少し照れくさそうに、でも愛おしそうに話し始めた。
「一年生の時から。私、中学からやってたから、高校でもそれなりに打てたのね。そしたら三年の先輩たちに目をつけられちゃって。『一年生のくせに調子乗ってんじゃないわよ』って。言い返せなくて困ってたら、小谷先生が来てくれたんだよね」
「『三年にもなって後輩いじめてるのか? 試合のことだけ考えろ』って。そこからかな、意識しだしたのは。なんか……恥ずかしいや。でも、夏で私たちは引退だから。会える頻度が減っちゃうんだけどね」
「告白、したりしないんですか?」
「告白?! そんなの……できないよ。……でも、告白しないで後悔するより、振られた方がマシかも、なんて最近は思っちゃうんだけどね」
先輩のその言葉は、私の胸にも深く刺さった。