第一章『死の代償』
いつからだろう。
楽しみとか喜びとか好きとか、
そういう簡単で単純な感情が消え去ったのは。
1991年6月13日 深夜3時
岩手県◻️◻️市◻️◻️町
あるマンションの3階にスポットライトが当たる。刑事10名がある1つの扉の前に待ち構えている。
「こちらは準備完了です。」
先頭の刑事が無線機で誰かと連絡を取っていた。きっと準備が整った他のチームからの連絡であろう。刑事が無線機を切ると深呼吸をしてその部屋のインターフォンを鳴した。1、2分経つと玄関の扉がゆっくりと開き、この部屋の住民らしき20代半ばの男性が顔を出した。
刑事は男性の容態をしっかり見ていた。顔が少し細長く、つり目で口は人並みくらいであり身長は165cm程で、がたいはとてもスマートだった。来ている服装は黒のヒートテックを着ており、下は黒のジャージらしきズボンを履いていた。
「はい、、、どうされました?」
「前崎 爛(まえさき らん)さんですね。」
「裁判所から逮捕状が出ています。大人しくご同行お願いいたします。」
すると爛という男は危機を感じ、すぐ扉を閉め鍵をかけた。本当に数秒の作業だった。刑事は玄関の扉を限界まで開けようとしたが爛の力で負けてしまい閉められ鍵をかけられてしまった。
「おい!!」
「ゴラァ!!開けんかい!!」
「おい!誰かバールを持ってこい!!」
「おいゴラァ!!扉を開けろ!!」
という大きな罵声が玄関で飛び交い爛は猛ダッシュでベランダを出ようとしており、爛は大急ぎでリビングの扉を開けた。するとそこに広がっていたのは赤黒い血のような色に染っている部屋だった。家具はテーブル、ソファー、ゴミ箱とテレビしかなかった。テーブルの上には見知らぬ人のプロフィールらしきものが書いてある紙が9枚ほど置いてあり、テーブルの隣に置いてあるゴミ箱にはクシャクシャに丸めた紙が2個捨ててある。なんて奇妙だ。
爛は周りの物を気にせずにベランダに走って行った。爛の身体能力は人並み以上なのでベランダから別の階に降りることは朝飯前だが、爛がベランダの鉄製の手すりを掴み、下を見た瞬間、動きが止まった。まるで子供が見たことがないものを見た瞬間と同様だ。
また玄関からあの忌々しい刑事の大声が聞こえる。
「逃げても逃げても無駄だ!!お前の身体能力は承知の上だ!!外には30人ほどの部下がお前のことを待ち構えてる!!いい加減大人しく同行しろ!!」
「金山さん!!バール取ってきました!!」
「よし!でかした!!」
爛の瞳には絶望と恐怖という2つの単語しか脳裏に浮かんでくることはなかった。ベランダから見た景色は彼にとって地獄絵図その物であった。玄関から聞こえてくる大きな物音と同時に爛の心臓は大きく脈を打っており身体全体に音が伝わって来る。爛はもうその場から動くことが出来なくなっていた。その時に刑事がバールで扉をこじ開けられた。
「ゴラァ!!爛!!いい加減同行しろ!!」
爛はもう抗うことは出来ない。この場合の逃げ場は到底、存在するはずがない。詰みだ。爛は潔く警察に捕まった。
1991年6月13日 深夜3時23分
「岩手県◻️◻️市◻️◻️町◻️◻️マンション3階304号室にて、前崎爛容疑者逮捕。彼が犯した罪は、殺人罪、内容は山陰 春人(やまかげ はると)さん、小野寺 学人(おのでら まなと)さん、2名の無差別殺人でした。」
「殺害のされ方とか聞いてもよろしいでしょうか??」
「殺害のされ方は、とても酷く、刃物で適当に7箇所を切り刻み、口を裂く殺害の仕方や7箇所の切り傷と顎が刃物で切り取られるという殺害のやり方でした。」
爛のことを逮捕した金山刑事長が駆けつけた新聞社やテレビ局に犯罪歴を一部始終公表していた。一方、爛はそのまま外に出されパトカーに乗らされるため補導されていた。この時の爛は心が砕け散っており、強いフラッシュを浴びながら下を見て歩くことしか出来なかった。
この後、この事件は『爛人殺人事件』(らんじんさつじんじけん)と呼ばれるようになった。
第一章『死の代償』終わり
コメント
11件
ヘロー いいですな!৻( •̀ ᗜ •́ ৻)
読んだンゴ〜
ええなぁ☆ 伊集院ちゃん!遊凛やで☆