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奴隷魔法を売る商売は失敗。
堕落させた両親に裏切られ、第四、第五、第六魔法の情報が流出したことに怒り、両親を殺害か。
短絡的だ。
無能と言っていい。
そもそも、5歳で商売を始めようなど。自信過剰にも程がある。
足りない信用は奴隷魔法の唯一性で補う予定だったが、半年でコピーされるとは何て様だ。
コピーされるのはまだいいとして、なぜ対策を講じていなかった。
業態をコピーされるなど、商売では日常茶飯事だったろうに!
……まさか。
いや、辻褄はあうか?
オレは現代日本を生きた記憶を引き継いでいるが、肉体は6歳児だ。
肉体が6歳ならば、脳も6歳なのではないか?
以前、オレが持っていた思慮深さがまるで感じられない。
記憶ではなく、感情の問題だ。
6歳らしい幼稚さに、魂が引きずられている?
流石に想定外だった。
問題は山積みだ。
昨日のオレは奴隷魔法の流出を食い止める為に躍起になっていたが、それどころではない。
オレが両親を殺したせいで、この家の家賃を支払う者がいない。
両親の死を隠蔽し続ければ、しばらくはここに住むこともできるだろうが、いずれは家を失い、路上へ放り出されることになるだろう。
6歳で路上生活者か。
生存できる気がしない。
裏市の治安を見るに、速攻でさらわれるのがオチだろう。
この家で凌ぐにしても、オレが奴隷魔法で稼いだ金は有限だ。
早く次の商売を始めたいが、6歳のガキを信用するバカはそういないだろう。
奴隷魔法で金が稼げたのは、オレだけが使える魔法だったからだ。
第三魔法が民間に広まった今、同じやり方は通じない。
第4以上の奴隷魔法を売っても、結果は同じ事だろう。
コピーされ、広まり、さらに治安が悪化するだけだ。
明日の飯にも困る日が、いずれやってくる。
ふと、疑問に思う。
オレには本当に商才があったのだろうか。
生前うまくいったのは父親の金と絶対無敵超人藤原先輩が猛烈に支えてくれたからではないのか。
自信が揺らぐ。
オレの死因は藤原先輩の親がブチ切れて放火したからだ。
なぜブチ切れたかと言えば、オレが藤原先輩の葬式で先輩を罵ったからだ。
『何をしている! この程度のことで死ぬんじゃない!!』
『嬉しいだろう? 馬車馬の如く働かせてやる!!』
あれでは先輩が過労死したのはオレのせいだと思われても仕方ない。
そういった配慮というか、気遣いというものが、まるでできていなかった。
さっきオレは自分のミスを肉体年齢のせいにしたが、キレやすいのは昔からだった。
「やれるのか? オレは。金を、稼げるのか?」
こんなに不安になるのは初めてだった。
6歳男児が両親の死体の前で金のことを考えている。
シュールだが、金は絶対に必要だった。
「やれるのかだと? 違う、やるんだろ?」
生前のオレの家には家訓があった。
それは。
『あらゆる不幸を他人に押しつけ、自分だけは幸せになること。』
幸福は有限で、不幸はいくらでも沸いてくる。
ならば、道徳や倫理といった甘ったるいものに脳を支配されている暇はない。
何をしてでも、絶対に、幸せになってやる。
オレだけは。
夜になるのを待って、闇市へ向かう。
通りにある店には目もくれず、昨日オレを襲った連中がいた場所に行くと、男たちは相変わらずたき火にあたっていた。
「おい、見ろよ。あんときのガキだ!」
「はは! バカだ! 戻って来やがった!」
昨日オレを逃がしてくれた奴隷のダルゴが動揺する。
目が「なぜ戻ってきた」と言っていた。
そんなことは決まっている。
「おい、おっさん。オレを奴隷にしろ」
「どこにでも連れて行くがいい」