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ウチの名前はまき。中学二年生。 九州の、ごく普通の家庭で育った……って言いたかばってん、ウチの妹たちはバリ個性が強すぎて、毎日が修羅場と。
次女の「みあ」は、元ギャルの小学六年生。 ウチのことが大好きで、いつもくっついてくる可愛いところもあるっちゃけど、末っ子のあおにはバリ厳しいと。
その末っ子「あお」は、小学四年生にして現役の金髪ギャル。 親友のハツちゃんっていうギャル友といつもつるんで、みあ姉ちゃんと毎日バチバチやり合いよる。
今でこそ賑やかな三人姉妹やけど、全ての始まりは、ウチがまだ小さかったあの日のこと。 お母さんが病院から、一人の「小さか生き物」を連れて帰ってきた時から始まったと。
それが、のちに「元ギャル」として覚醒する、次女・みあとの初めての対面やった。
「……なんね、この子。バリ顔の赤か。……でも、ちかっぱ可愛いね」
ウチは、自分がお姉ちゃんになったっていう誇らしさと、お母さんを奪われたような、ほんの少しの「やきもち」を胸に、眠るみあの頬っぺたをそっと突っついた。
ウチが二歳の時。世界で一番大事なものは、お母さんと、売店で買うチョコモナカやった。
病院の廊下は白くて、なんだか消毒液の匂いがして。お父さんが「まき、妹に会いに行こうね」ってデレデレな顔で言うとったばってん、当時のウチには正直どうでもよかったと。 「アイス……アイス買うて……」 ウチの頭の中は、妹よりも売店のアイスでいっぱいやった。
ばってん、病室のドアを開けた瞬間。 「ギャアアアアアン!!!」 鼓膜が破れるかと思うくらいの、バリデカい鳴き声が響きわたった。
お母さんの腕の中で、顔を真っ赤にして暴れとるのが、次女の「みあ」。 病院中で一番うるさいんやないかってくらい、みあの泣き声はパワフルやった。後の「元ギャル」としての気の強さは、もうこの時から始まっとったとかもしれん。
「まきにそっくりやねぇ。二人とも美人になるばい!」 お父さんはウチとみあを見比べて、鼻の下を伸ばしてデレデレ。
ウチは、チョコモナカを齧りながら、その泣きわめく「侵入者」をじっと見つめた。 お母さんの膝の上はウチの特等席やったとに、今日からはこの、声がデカすぎる赤ちゃんと分け合わんといかん。
アイスの冷たさと、胸の奥がちょっとだけチリッとするような「やきもち」。 それが、ウチとみあの、一番古い思い出。
ウチが三歳、妹のみあが一歳になった頃。 家中は、ちいさな「破壊神」の出現で、毎日がひっちゃかめっちゃかやった。
「あーっ!ウチの宝物がぁ……!」 ウチが大事にしとったおもちゃも、落書き帳も、みあの手にかかれば一瞬でバリバリのボロボロ。一歳児の握力ばナメたらあかん。
泣きそうになるウチを見て、お母さんはいつもこう言うと。 「まき、お姉ちゃんやけん我慢しなさい」
……正直、バリ納得いかんかった。「お姉ちゃん」って、そんなに損せんとダメなの? ムッとして、みあのことをちょっとだけ睨んでみたばってん、当の本人は「へへっ」てヨダレ垂らしながら笑っとる。……くそぅ、可愛かけん許してしまうっちゃもん。
そんなある日のこと。 まだ言葉もあやふやなみあが、ウチの顔をじっと見つめて、ハッキリと言ったと。
「……あお」
お父さんもお母さんも、「え?今なんて?」って顔を見合わせとった。 ウチの名前は「まき」やし、お父さんの名前でもなか。
でも、みあは何度も、青い空を指差すみたいに、 「あお! あお!」 って、嬉しそうに連呼しよった。
その数年後、本当に「あお」っていう名前の、金髪ギャルになる末っ子が生まれてくるなんて、この時のウチらはまだ、誰も予想しとらんかったとよ。