テラーノベル
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ウチが四歳、みあが二歳。 この頃のみあは、まさに「魔の二歳児」そのものやった。
特にお洒落へのこだわりがバリ強くて、お母さんが準備した服は「これじゃなか!」「ヤダ!」の一点張り。 フリフリのピンクじゃないと気が済まんと。後のギャル化への第一歩は、この「ピンクへの執着」から始まっとったとかもしれん。
そんなみあに振り回されて、ウチも限界やった。 「もう、みあちゃんワガママばっかり……!」 結局、ウチもお母さんの横で一緒になって「えーん!」って泣き出す始末。四歳と二歳が揃って大合唱するもんやけん、家ん中は毎日がお祭り騒ぎやった。
そんな中、みあがよく使いよった言葉がある。 「まきねぇ、こうかる! こうかって!」
泣き疲れたみあが、ウチの背中にペタッとくっついて、おんぶをせがんでくると。 四歳のウチには、二歳のみあはバリ重かったばってん、「こうかる!」って言われると、お姉ちゃんとして頑張らんとって思ってしまうとよね。
重たくて、あったかくて。 わがままな妹を背負いながら、ウチらは一歩ずつ一緒に大きくなっていった。
みあが一歳になって、ハイハイのスピードがバリ速くなった頃。 ウチにはちょっとした悩みがあった。それは、近所の幼馴染で仲良しの「文(ふみ)くん」と遊ぼうとすると、必ず「ストーカー」が現れること。
「文くん、これ見てん! ウチが描いたとよ」 ウチが三歳の知恵を絞って描いた絵を文くんに見せようとすると、どこからともなく「高速ハイハイ」でみあが突進してくると。
そして、文くんとウチの間に強引に割り込んで、まだ言葉もろくに喋れんくせに、顔を真っ赤にして叫ぶとよ。 「ふみぃぃいいいいいいイィぃっぃイイイイ!!!」
……なんね、その呼び捨て。しかもバリ声デカいし。 文くんも「え、えっ?」て困り顔。一歳のみあにとって、文くんは「まき姉ちゃんの友達」やなくて「自分のおもちゃ」か何かに見えとったとかもしれん。
ウチが文くんと喋ろうとするたびに、みあは「ふみぃぃいい!!」って叫んで文くんの裾を掴んで離さん。 「みあ、文くんはウチと遊びよるとよ! あっち行っとき!」 ウチが怒っても、みあは「ヤダ!」って顔で文くんにベッタリ。
三歳のウチと、一歳のみあ。 文くんを挟んで、言葉にならないバチバチの火花が散りよった。 お姉ちゃんとして優しくせんとって分かっとるばってん……この時ばかりは、一歳児相手にバリ本気で「やきもち」焼いとったとは、内緒の話ばい。
相変わらず、文くんが遊びに来るたびに「ふみぃぃいいいい!!」って叫んで突進していくみあ。 一歳児のくせに、文くんの隣は絶対譲らんっていう執念がバリ凄かった。
ウチと文くんが砂場で遊ぼうとすれば、みあが間に割って入って砂をぶちまける。 「みあ!ダメやん!」 ウチが怒っても、みあは文くんの服をギュッと掴んで離さんと。文くんも「あはは、みあちゃん元気やね……」って苦笑いするしかなくて、ウチはバリ申し訳ない気持ちやった。
でも、その日の夕方。 遊び疲れたみあが、文くんの膝の上でカクンって寝落ちしたと。 文くんが「あ、寝ちゃった」って優しく笑って、みあの頭をなでなでした時、ウチは思った。
(……なんか、もうよか。みあ、文くんのことバリ好きっちゃもんね)
お姉ちゃんとして一歩引くことを覚えた三歳の秋。 文くんに抱っこされてスヤスヤ眠る破壊神の顔を見ながら、ウチは「いつか、もっと家族が増えたら、もっと賑やかになるんかなぁ」って、ふと思った。
まだ見ぬ妹、「あお」の気配が、ほんの少しだけ近づいとるような気がした――。
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