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恋人同士になってからの二人は、順風満帆な関係とは言えなかった。
大型連休直前、瑠衣が何者かに一週間ほど拉致監禁され、その間、多くの男らに蹂躙され続けた。
痩せこけた彼女を自宅近くで発見した際、うわ言のように『先生、今すぐ私を捨てて』と何度も繰り返した瑠衣。
この頃、侑の中では既に『瑠衣の全てを受け止める』覚悟はできていたし、『瑠衣だけは絶対に離さない。この先の人生、どんな事があっても彼女を愛し抜く』と誓った。
そして、つい最近。
瑠衣の妊娠が判明したと同時に見つかった子宮頸がん。
しかも、他の組織にまで広がっている浸潤がん。
瑠衣は、輪姦された時にできた子どもと思っていたのもあり、かなり取り乱していた様子だったが、侑には、ずっと言葉に出せずに朧気にあった想いがクッキリとした形で浮かび上がってくるのを感じていた。
瑠衣の気持ちに応える事、侑自身の気持ちに確固たるものがなかったせいで、彼女には散々不安な思いをさせてきただろう。
だが今なら、侑は自信を持って瑠衣を前にして『愛してる』と言える。
先日、医師の友人、朝岡から手術の際、瑠衣の子宮を摘出すると説明を受け、彼女との子も望めない、とも宣告された。
それでも侑は、瑠衣が生きてくれればいい、そのためだったら何でもする、と朝岡に言い切ったのだ。
(瑠衣がいない人生など…………俺にはもう考えられない……)
——手術が終わったら、俺も瑠衣に想いと愛をきちんと伝えよう。
長く回想の海を漂っていた侑は、瑠衣の手術が無事に終わるよう、ただひたすら祈り続けながら決意を固めた。
どれくらいの時間が過ぎたのだろうか。
徐に腕時計を見ると、十五時半を過ぎていた。
(そんなに長い時間……ここで瑠衣への想いに耽っていたのか……)
思わず微苦笑していると、病室のドアがノックされた事で侑は我に返る。
返事をすると、ストレッチャーに乗せられた瑠衣が朝岡と数人の看護師とともに戻ってきた。
ベッドに移され、目を閉じたままの瑠衣を心配しながら見つめる侑をよそに、看護師たちが彼女に点滴や心電図モニターなどテキパキと装着させている。
「響野。九條さんの手術、無事に終わったぞ」
侑は立ち上がり、朝岡に一礼し、命の恩人とも言える友人の手を握る。
「朝岡…………ありがとう……本当に…………ありがとう……」
鋭い目つきの奥に宿る瞳の色が滲み、侑は熱くなっていくのを感じた。