職場に着いた雪子はロッカールームでエプロンを着けるといつもの持ち場のレジへ向かった。
そして隣のレジにいた節子に挨拶をする。
「雪子ちゃんさぁ、なんか今日はお肌が艶々してるよねぇ。もしかして化粧品変えた?」
その言葉に雪子は驚く。
今朝自宅に戻りシャワーを浴びた後自分でもそう感じていたからだった。そして節子も言っているのだからきっと気のせいではないのだ。
「いえ、特に変えてはいませんが」
「あらーそうなの? なんかお肌が艶々していてまるで女子高生みたいだわ」
そこへ近くの棚で品出しをしていた山本が口を挟む。
「雪子さん、恋でもしてるんじゃないですかー? なんか最近どんどん綺麗になっている気がしますよ」
「え? そうなの? 雪子ちゃん彼氏出来たの?」
いきなり二人がそんな事を言ったので雪子は顔を赤くしながら言った。
「違いますよー変な事言わないで下さい。あ、でもせっかく褒めてくれたんだから後で缶コーヒーでもご馳走しちゃおうかなぁ?」
「やったー!」
「まぁ嬉しい! 言ってみるもんだね」
節子と山本の言葉を聞き雪子が声を出して笑う。三人の笑い声が響く中スーパーは開店時刻を迎えた。
その日仕事を終えた雪子はまっすぐ家に帰った。そして手早く夕食を作り食べ終えると入浴を済ませてから紅茶を入れてダイニングテーブルで一息つく。
そして紅茶を飲みながら昨夜俊に貰った見積書に目を通し計算機に数字を打ち込む。
想像していたよりも予算は少なくこれならなんとか準備ができそうだ。
これなら貯金の一部を崩すだけで済む。残りの貯金はしっかり老後の為にとっておける。
もしカフェを始めたらパートはどうするか? 営業日や営業時間はどうするか? 座席数はどのくらいがちょうどいいのか?
他にもいろいろ具体的に考えてみる。
家の改装工事や厨房器具については俊の知り合いに頼めるので、あとはテーブルなどの家具類をどうするか? 食器も必要だ。
そして店内はどんな雰囲気にするか、店の名前はどうするか? 考える事は山ほどあるがそれを考えるのも楽しい。
しかし一番大事な事はケーキを外注する店が見つかるかどうかだ。そこで雪子はネット検索で市内にあるケーキ店を一つ一つ調べていった。その中に気になる店を見つけた。
そのケーキ店も自宅ショップだった。
ホームページには店主の写真が掲載されていて雪子と同年代のとても素敵な女性だった。
そして雪子はそこのケーキが気に入った。雪子が求めていたタイプのケーキだ。
その店が作っているのは国内産小麦と季節に合わせた具材を用いた甘さ控えめのカントリーケーキだ。
今販売されているものは4種のナッツのケーキ、いちじくのケーキ、ミックスベリーのケーキの三種類でどれも美味しそうだ。季節の定番の三種類の他に日替わりでガトーショコラやチーズケーキがあるようだ。
雪子はその店が気になったので今度の休みにケーキを買いに行ってみる事にした。
そして次の週の月曜日、雪子は修のコーヒースクールへ出掛けた。
時間より少し早めに行き雪子は修に自宅カフェを開く事を伝えた。
修は優子から話を聞いてたのだろう。特に驚いた様子もなく雪子のチャレンジを応援すると言ってくれた。
「僕で手伝えることがあったらなんでも言いなさいよ。遠慮しないでね」
「ありがとうございます。頼りにしています」
雪子は笑顔で答えた。
そして雪子は真田夫妻の店に俊が連れて行ってくれたと話した。修も真田夫妻と同じ大学だったので顔見知りだった。
修も何度か真田の店へ行った事があるらしい。あの店も自宅カフェだからかなり参考になったでしょうと修は言った。
「で、あれかい? スイーツ類は真田君のところみたいに外注するの?」
「そうしようと思います」
「どこか心当たりの店はあるの?」
「はい、この前ネットで探していたらちょっと気になった店があったので次の休みに行ってみようと思います」
雪子はスマホにそのケーキ店のホームページを表示させた。
修はそのページをまじまじと見つめる。
「ここは俺も知らないなぁ。今はこういうシンプルなケーキが流行り始めているからいいと思うよ」
修にそう言われて雪子はホッとした。
そろそろ講座が始まるので雪子はスクールの席へ戻って行った。その後ろ姿を見ながら修は微笑む。
雪子は修にとって妻の親友というだけでなく今では妹のような存在だ。
雪子の離婚後の苦労を傍でずっと見て来た修は、父親の死とデパートの閉店が次々と雪子の身に降りかかったのでかなり心配していた。徐々に元気がなくなっていく雪子の事を妻の優子もとても心配していた。
しかしここ最近の雪子は信じられないくらいやる気に溢れていると優子から聞いていた。
今見た雪子は妻が言っている通りだった。だから修は心からホッとしていた。
(きっともう大丈夫だろう。俊もいるしな)
修は穏やかに微笑んだ。
修はスクールで使う材料をトレーに載せると雪子に声をかけた。
「雪子ちゃん、これもそっちに運んでもらえる?」
「はーい」
雪子がトレーを受け取りスクールのテーブルに並べていると受講生たちが次々と店内に入って来た。
そしてコーヒースクールの講座がスタートした。
コメント
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俊さんに愛され 大切にされ、益々美しくなり お肌も艶々な雪子さん👩💕✨ やっぱり職場の皆さんにもバレている⁉️♥️🤭 カフェオープンに向けて、いよいよ本格的に動き始めますね....♪☕️✨ 俊さんや 修さんという強力な味方もいるし、何よりも 雪子さん自身のやる気、強い意欲を感じます✊‼️ ケーキ屋さんの視察も楽しみ~🎶 美味しいケーキに出会えて、良いお返事が貰えますように🍰💕
愛で満たされて美しくなっていく雪子さんに皆さんが注目👀✨恋人疑惑も時期にバレちゃうかも⁉️ですね🤗❤️ そして俊さんに出してもらったカフェ見積もりを見てやる気になった雪子さん‼️ 俊さんだけでなく修さんや優子さん他の力添えもあってこれからオープンに向けて雪子さん自身が動いて頑張る姿は俊さんも目を細めて喜んでくれそう👩❤️💋👩💕❣️
カフェオープンに向かって動き出しましたね〜‼️ 雪子さんの人柄で周りの人達も協力を惜しまない、きっと成功しますね✨ 全てを俊さんに任せるのではなく、自分の意思で動く雪子さんが素敵(❛ᴗ❛人)*˖⌖゚