そして次の休日、雪子はお目当てケーキ店へ行ってみる事にした。
店の営業時間は午後1時から4時までとなっているので昼食を終えた後早速出かける。
ケーキ店までは車で10分もかからずに着いた。自宅ショップは可愛らしい洋館風の戸建てだった。
来客用の駐車場が1台分あったので雪子は車をそこへ停めた。隣には店主のもと思われる外車の真っ赤なコンパクトカーが停まっていた。
営業時間が午後という事は午前中にケーキを製作しているのだろう。
女性一人で切り盛りしている小さな店なので無理のない営業形態にしているようだ。
店の種類は違うが自宅ショップと言う点では雪子と共通していたのでその営業形態はとても参考になる。
玄関までは階段を上がっていくようだ。その階段の一番下には『クラージュ』という立て看板が置かれていた。
雪子が階段を上がり玄関の前まで行くと、
『ケーキをご希望の方は庭へお回り下さい』
と書かれた看板が下がっていたので雪子は庭の方を覗いてみる。そこにはウッドデッキと芝生の庭があった。
ウッドデッキは家の掃き出し窓と繋がっておりそこが店のようだ。ウッドデッキには真っ赤な木のチェアが置かれている。
椅子の上には『open』という看板が立てかけてあった。どうやらここが店のようだ。
看板には『ベルを鳴らして下さい』と書いてあったので雪子は赤い椅子に置いてあった可愛らしいハンドベルを
鳴らしてみた。
「はーい!、今行きまーす!」
すぐに家の中から声がした。
雪子がドキドキしながら待っていると掃き出しのガラス窓がスーッと開き女性が立っていた。
窓の向こう側には小さなショーケースがあり中にはホームページで見たケーキが何種類か並んでいた。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。あの、ホームページを見て来たのですが…….」
「あらーありがとうございます。ここわかりにくかったでしょう?」
「あ、いえ、近くに来たら看板ですぐにわかりました」
「それなら良かったわ。今日のケーキはここに並んでいるので全部なの。左からいちじく、ミックスベリー、りんごと胡桃、あとは日替わりのチーズケーキです」
「全部美味しそうですね。じゃあいちじくとミックスベリーを1つずつお願いします」
「ありがとうございます。では2つで900円になります」
女性は早速2つのケーキを箱に入れた。雪子は本当は全種類食べてみたかったが一人暮らしだと二つが精一杯だ。
会計をしながら一つ450円は安すぎると思った。物価高の今この値段でやっていけるのだろうか? 仕入れるとしたらいくらくらいになるのだろう? 雪子は考える。
「ありがとうございます。100円のお返しです。お住まいはお近くですか?」
「はい、市内です。駅寄りの切り通しの入口付近なんです」
「ああ、あの辺りですか。ここからだと車で5~6分よね」
「ええ。で、あの…….」
「はい?」
「実は私も自宅でカフェを開こうかと思っていて」
「え?」
「こちらのお店みたいに自宅を改装してカフェにしようかと。あ、まだ計画段階なのですが。で、その際店で出すケーキを探していて、もしカフェをオープンする際はこちらのケーキを仕入れさせていただけないかと」
雪子は断られるのを覚悟で勇気を出して言った。デパート時代は営業的な仕事も多くあったのでこういった交渉事は慣れている。しかし久しぶりなのでつい緊張してしまい手に汗を握る。
ケーキ店の店主はかなり驚いていたが雪子の説明を理解したようでこう話した。
「とても嬉しいお誘いですがまずはうちのケーキを食べてみてからの方がいいのでは?」
女性はフフッと笑って続ける。
「良かったらそちらの椅子に座って下さいな。今お茶をお持ちいたしますから」
「いえっ、そんなお構いなく」
「ちょうど私もお茶をしようと思っていたところだから気にしないで」
女性が是非にという顔をしたので雪子は有難くその申し出を受ける事にした。
コメント
3件
↓らびぽろちゃんに同感で、いちじくのケーキ美味しそう💕りんごと胡桃も良いなぁ~🥧😋💕 優しそうな女性で、思い切って声をかけて良かったですね👍️💓 交渉、上手くいきますように....🙏🍀
優しそうで話を分かってくれそうなステキな女性😊🌸 お店の雰囲気も可愛らしげで場所も雪子さん宅から近くて、価格もリーズナブルと来たら後はお味だけ😊🍰🧁🎂 遺品整理をして俊さんと出逢ってからみるみる元気になって夢まで引き寄せた雪子さん✨✨ カフェオープンが待ち遠しいわぁ〜☕️🍹🍰🎶
先ず…いちじくのケーキ食べたい🤤大好き😋 感じ良さそうだし、お茶とケーキをいただきながらじっくり話せるといいね。 交渉上手くいきますように…(人*˘ᵕ˘*)*。+⁺⊹˚.⋆🍀𓈒 𓏸