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母子家庭だけど優しいお兄ちゃんが居てこれからも温かく見守ってくれそう
「この子は必ず幸せにする」そう誓う優羽ちゃんの子になれた地点で流星くんは幸せ✨ 2人を見守るお兄ちゃんの優しさが泣けるぅ😭😭😭
1人で出産して懸命に生きてきた2人。流星くんの元気で明るく子供らしいところに救われる。 実家で少しでも落ち着けて、新しい職場も早く見つかるといいな。
気がつくと、ガタンゴトンという列車の規則的なリズムが続いていた。
隣を見ると、流星も眠っている。
ここ最近、いろいろなことが続いていたので、流星も疲れていたのだろう。
せっかく大好きな電車に乗ったというのに、可愛い顔をしてすやすやと眠り込んでいる。
その寝顔を見つめながら、優羽は胸の奥でそっと思った。
(この子を必ずに幸せにしてみせる)
優羽はそう固く心に誓った。
いつの間にか都会の景色はすっかり消え、窓の外には広々とした田園風景が広がっていた。
優羽はぐっすり眠る息子に寄り添いながら、変わり映えのしないその景色を静かに見つめ続けた。
やがて列車は松本駅へと近づいた。
優羽は眠っている流星をそっと起こす。すると流星はまだ眠たかったのか、ぐずり始める。
「ほら、もうすぐ駅に着くわよ。松本駅のホームが見えるわ」
母親の声を聞いた流星は、急にぐずるのをやめ、窓ガラスに手をついて外をのぞいた。
「ここで降りるからね」
優羽はそう言って荷物を手にし、流星の小さな手を握って出口へ向かった。
まもなく列車はホームに滑り込んだ。
「ま~つもと~、ま~つもと~」
アナウンスが流れると、流星がすぐに真似をした。
「ま~ちゅもと~、ま~ちゅもと~」
すっかりご機嫌になっている。
二人は今乗ってきた電車を見送ると、改札へ向かった。
改札を出て駅ビルのエスカレーターに乗り、駅前広場へ降りていく。
流星は長いエスカレーターに初めて乗ったので、少し興奮していた。
「ママ、エシュカレーターながいねぇ」
その愛らしい口調に、思わず優羽はクスッと笑った。
子供は純粋で愛らしい。
こんな瞬間、優羽は流星を産んで本当に良かったと心から思う。
下まで降りたところで、懐かしい声が響いた。
「優羽、お帰り! おおっ、流星……大きくなったなぁ」
そこには優羽の兄・裕樹が笑顔で立っていた。
「お兄ちゃん、迎えに来てくれてありがとう」
優羽は微笑みながら礼を言う。
そして流星に向かって、
「流星、裕樹おじちゃんよ。最後に会ったのは二年前だったから、覚えてないかな?」
「そうだなぁ。あのとき流星はまだ二歳だったからなぁ」
裕樹は目を細めてしゃがみ込み、可愛らしい甥の瞳をじっと見つめる。
そして、
「裕樹おじちゃんだよ」
と言って、流星の小さな手を取り、握手をする。
「ひろ……き、おじ……?」
「ひろちゃんでいいよ!」
それを聞いた流星は、
「ひろちゃん、ひろちゃんだね!」
と嬉しそうに笑った。
「ひろちゃんはママのお兄ちゃんなのよ」
「ひろちゃんはおにいちゃん、ママのおにいちゃん!」
流星は優羽の言葉を何度も繰り返し、嬉しそうに飛び跳ねた。
裕樹と流星が初めて会ったのは、優羽が流星を産んだ直後だった。
そのとき裕樹は、有給を取って東京の病院まで駆けつけてくれた。
たった一人で子供を産む妹のことが心配だったのだ。
そして二年前、出張で東京に来た際にも、二人のことを気にかけてアパートに立ち寄ってくれた。
三人が再会するのは、そのとき以来の二年ぶりだった。
優羽の家は母子家庭だった。
母は若い頃に父と離婚し、優羽が物心ついたときにはすでに父はいなかった。
裕樹は優羽より十歳年上で、ずっと父親代わりのような存在だった。
優羽がシングルマザーになると決めたとき、母は猛反対したが、兄の裕樹だけは変わらず温かく見守ってくれた。
「じゃあ、車に行こうか」
裕樹はそう言って二人を車へ案内した。
ここから、母が住む実家までのドライブが始まる。
実家は松本駅から三十キロほど離れた信濃大町にある。
優羽は五年ぶりに見る地元の風景を、懐かしそうに眺めていた。
その横で、流星が言った。
「山がいっぱいあるねぇ」
「流星、ここにはね、もっともっと大きな山がいっぱいあるんだよ」
「もっとおおきいの? しゅごいねぇ」
流星はにこにこと笑い、裕樹はバックミラー越しに優しい眼差しを向けた。
東京での生活が行き詰まり始めたとき、真っ先に「帰ってこい」と言ってくれたのは裕樹だった。
帰ってくれば子育てを手伝うからと励ましてくれた。
裕樹はまだ独身で、自由に使える時間が多い。
その時間を使っていくらでも協力するからと言ってくれた。
優羽はその言葉に救われた。
それほど東京での母子の生活は追い詰められていた。
兄の思いやりを無駄にしないためにも、優羽は自分も精一杯頑張ろうと強く心に誓った。