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48 - 第10話:Z、日本を歩く

2025年10月04日

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第10話:Z、日本を歩く



— 空港の到着


成田空港。


到着ゲートに現れたのは「特別観光客」として招かれた緑のフーディの男──Z(ゼイド)。

フードを脱ぐと、浅黒い肌に鋭い目つき。口元には柔らかな笑みを浮かべているが、その視線は天井カメラやWi-Fiアンテナ、入国端末を無意識に追っていた。


迎えに来たのはまひろとミウ。


まひろは水色のTシャツにカーキ色のハーフパンツ。小さなリュックを背負い、伸び始めた背丈とまだ残るあどけない顔立ちでZを見上げた。

「はじめまして、Zさん! 今日はぼくたちが案内するんだよ」


ミウはブラウスに淡いベージュのロングスカート。髪を後ろでふんわりまとめ、ラベンダー色のスカーフを首元に結んでいる。

「え〜♡ ようこそ旧日本へ。今は“大和国”だけど、観光はまだ“日本らしさ”が残ってるんだよね」





都心の観光


銀座の通り。

看板には「YamatoCoin歓迎!」の文字。観光客がスマホをかざして支払いをしていた。


Zは笑みを浮かべながら、まひろに問いかける。

「ここは昔、日本円だけだったのか?」


まひろは無垢に答える。

「うん。でも今はヤマトコインで買えるんだ。ぼくのお小遣いもコインなんだよ!」


ミウは隣でふんわり笑い、声を添えた。

「え〜♡ 旧日本円も少しは残ってるけど、みんな未来を信じてコインを使ってるんだよ」


その間もZの指先は自分の端末を操作し、通りの監視カメラを次々にハイジャック。

観光客の行動ログが吸い上げられていくが、周囲からはただ「旅行者が写真を撮っている」ようにしか見えなかった。





観光地での熱狂


浅草、雷門。

「Zさん!」と呼びかける観光客たちに囲まれ、記念撮影を求められる。


まひろは目を輝かせて言った。

「Zさんって、観光客なのに人気者だね!」


ミウはふんわり微笑み、ラベンダーのスカーフを軽く指で直した。

「え〜♡ だってZさんが“大和国を広めた人”って、みんな知ってるから」


Zは笑顔を見せながらも、仲見世通りの上に設置されたWi-Fiアクセスポイントに視線を向ける。

検索履歴や決済情報が静かに彼の端末に流れ込んでいった。





夜の語らい


ホテルのスイートルーム。

窓の外には赤く灯る東京タワーと、広がる街の光。


まひろはベッドに腰掛け、無垢な声で言った。

「ぼく……ただ“観光案内”してるだけなのに、Zさんがいろんなデータを集めてるなんて知らなかった」


ミウはランプの下でスカーフを外し、柔らかく微笑んだ。

「え〜♡ でも、それも未来を作るためなんだよ。

“大和国の観光”って、もうZさんに会えるってことと同じなんだから」





結末


窓際に立ったZはフードをかぶり直し、端末を閉じた。

「観光とは便利だな。人は自ら進んで情報を差し出す。

俺が歩くだけで、都市そのものが俺のものになる」





無垢な問いとふんわり同意、その裏で“観光”は監視へと変わり、旧日本の街は静かに大和国の影に飲み込まれていった。

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