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鍵を返しに行く、という名目で自分を奮い立たせ、家を出た。わかりやすく目印に付けておいた黒いキーホルダーを外して、鍵だけにして持って来た。

握って、ポケットにしまい、息を整え、めめの部屋に入る。


部屋の中は以前より雑然としていた。


めめの匂いがした。

……体臭?

でも、決して嫌な匂いじゃない。むしろ好きで、嗅いでて安心する匂いだ。恋人だとかそういうややこしい名称が付く前からいつも身体に馴染んでいた香り。


今日を越したら、この家にまた来ることはあるんだろうか。


友だちに戻れなかったら、俺たちは…?


様々な想いが交錯する中、俺は胸に湧いた不安を振り払うようにかぶりを振った。


💙「いないのか」


いつものようにソファに座る。

慣れ親しんだ場所のはずなのに、めめの家はなんだか他人の家の感じが強くなっていた。昨夜から緊張していたから、少し眠い。最近は眠りも浅いし、疲れていた。


横になる。

目を閉じる。


めめのことを思い出す。めめのいない部屋で、めめのことを考える。自然と涙が出て来た。

そしていつのまにか、俺は眠ってしまっていた。






優しく撫でられる感触がして、慌てて目を覚ます。


💙「めめ?」


🖤「しょっぴー……」


めめの手が耳にかかる。

引き寄せられるようにして、唇を重ねた。


🖤「久しぶり」


ふにゃ、と情けない顔になって、俺はどっと泣き出してしまった。


🖤「え?え?あ、また俺なにかやらかした?」


慌てるめめ。

ごめんだけど、止まらない。

俺はめめの頬に手をあて、自分からキスをした。


💙「もう終わりにしようと思ったんだ」


めめが真剣に俺の目を見る。


💙「でも、無理…。どうしてくれんだよ…俺の気持ち。ちっとも自分の思い通りにならない…」


手に握った鍵を見せる。

めめはその手ごと、俺の手を握った。


🖤「しょっぴー、好きだよ。もう、嫌がることはしないから」


💙「…………」


🖤「ねえ」


💙「ごめん、嫌じゃない」


🖤「よかった…」


💙「でも、怖かったんだ。俺が、俺じゃなくなりそうな気がして」


めめは、もう一度、優しく口付けをした。

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コメント

2

ユーザー

こんなん覗いていいのか。泣いてます。

ユーザー

切なさが溢れてる空気感がめちゃくちゃ好きで、このお話1番大好きです🩵

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