テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
その後、瑠衣と奏は、昼食がまだだった事もあり、ハヤマ銀座店から程近いカフェに立ち寄った。
カルボナーラのドリンクセットを二つ注文した後、早速スマホでスコアを探し始める二人。
「検索結果を見ると、楽譜自体が大分前に出版されたみたいだし、店頭では売ってないのかもねぇ……」
奏が画面をスクロールさせながら残念そうにぼやくと、瑠衣は諦めきれないのか、外の景色を見ながらポツリと呟く。
「でも、せっかくだから吹いてみたいなぁ。大学の頃って、いつも響野先生が曲を決めてたから、吹きたい曲があっても言える雰囲気じゃなかったんだよね……」
「響野先生のレッスンって、やっぱり厳しいんだ?」
「厳しいし、怖かったなぁ。心折れそうな辛辣な事も、沢山言われたし……」
瑠衣の言葉に奏の漆黒の瞳が見開かれ、『ひえぇ〜!』と大袈裟に驚き、瑠衣が苦笑しながらセットで注文したアイスコーヒーを口に含み、言葉を続ける。
「もうひとつの候補曲のスコア……もし中古で売っているなら手に入れたいね」
「あ、中古のスコア、売ってるんですけど!」
「本当? じゃあ私が買うね」
瑠衣は大手ネット通販へアクセスし、スコアを購入した。
「二曲とも見つかって良かった!」
二人は目的の二曲が見つかってホッとしたのか、まだ手付かずだったパスタをようやく食べ始めた。
二人がやっと見つけた曲は、織田英子作曲『トランペットが吹きたい』。
作曲者の夫でもあり、トランペット奏者の織田準一が奏でる旋律が爽やかで、トランペットの魅力が凝縮されている楽曲。
先週の顔合わせの時に瑠衣と奏が見つけた動画は、織田夫妻のコンサートの動画で、
『夫婦で音楽を作り上げるというのが素敵』と思ったのだ。
「今日、瑠衣ちゃんとトランペットのスコアを探してて改めて思ったけど、私もまたラッパを吹きたくなっちゃった」
「だったら、今から東新宿の先生の家に行く? 先週、響野先生が奏ちゃんに『時々でいいから九條と会ってやってくれ』って頼んだから、文句は言われないはず……」
「本当? じゃあ一応怜さんにも連絡しておく」
「私も先生に連絡しておこうかな……」
二人はカフェを出た後、地下鉄に繋がる階段を下り、東新宿へ向かった。