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第44話:月から届く光
夜の配信。
まひろは水色のパーカーに濃いグレーの短パン、足元はまだ少し大きめのスニーカー。机の上にヤマトフォーンを置き、無垢な瞳でカメラを見つめていた。
「ねぇ……ぼく、きょう学校で“月の授業”があったんだ。
先生が“月から届く光は大和国の未来を照らす”って言ってたよ」
隣のミウはラベンダー色のブラウスに花柄スカート。肩までの髪をひとつにまとめ、イヤリングを揺らしながら、ふんわりと笑った。
「え〜♡ そうなんだぁ。大和国はね、月に翡翠核(ヒスイコア)を使った発電所をつくってるの。
昼も夜もずっと太陽の光を集めて、未来のエネルギーにするんだよ♡」
コメント欄が一斉に沸く。
「無限エネルギー!」「月が味方!」「大和国すごい!」
テレビ特集
画面が切り替わり、大和テレビの特番が流れる。
タイトルは 「未来の無限エネルギー計画」。
銀と緑の制服を着た国軍(サムライ)が、巨大なスクリーンの前で市民に説明していた。
CG映像には月面に建設された巨大なパネル群が映り、そこから地球へ光が届くイメージが流れる。
ナレーションが響く。
「月面翡翠核発電計画──大和国が世界に先駆けて挑む、人類の未来の光です」
会場に集まった市民は拍手し、「未来は明るい」と口々に言った。
学校での刷り込み
翌日の授業。
子どもたちの机には「未来地図」と書かれた冊子が配布されていた。
表紙には、緑の大和国の上に光を降らせる月のイラスト。
教師は黒髪を後ろでまとめ、紺色のスーツに緑のバッジを付けていた。
「みなさん、覚えてください。
空は国軍が守り、海は貨物船が動かし、月はエネルギーを届ける。
だから大和国は安心できるんです」
生徒たちは声をそろえて唱和した。
「月は未来の光、大和国の夢」
裏の現実
暗い地下施設。
緑のフーディをかぶったゼイドはモニターに映る月面映像を見つめていた。
実際の月には、翡翠核発電所など存在しない。
送られてくるのは軍事衛星からの電波と試作兵器のデータだった。
ゼイドは笑みを浮かべ、小声で呟く。
「光を“エネルギー”と呼べば、市民は未来を信じる。
実際は兵器でも、夢として流せば誰も疑わない」
結末
夜の配信に戻る。
まひろは机に肘をつき、無垢な瞳で言った。
「月からの光があるなら、ぼくたちはもう怖くないんだよね」
ミウはイヤリングを揺らしながら、ふんわり微笑んだ。
「え〜♡ そうだよ。大和国には“未来を照らす光”があるんだから♡」
コメント欄は「月が希望!」「未来の安心!」で埋め尽くされ、市民たちは一層大和国を誇らしげに語るのだった。