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ポテサラ
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#実況者イラスト
アル🧩👾
11
「今日、何食べる?」
食堂で、レウが聞いた。
向かいでは、らっだぁが本を読んでいる。
「鹿」
「昨日も鹿だったよ」
「じゃあ今日も鹿」
「飽きないの?」
「飽きるよ」
「じゃあ別のにしようよ」
らっだぁは、最初の頃は俺を見ているだけで何も食べなかった。
最近は一緒に食べてくれることが多い。
理由を聞くと、
『栄養にはならないけど、レウだけ食べてるのなんかずるい』
らしい。
相変わらずだ。
「別のって、何があるの?」
「……」
レウは黙った。
机の上に並べられた食材を見る。
鹿肉。
森で採った果物。
少しの野菜。
パン。
保存していたスープ。
「……鹿だけ」
「じゃあ鹿でいいじゃん」
「そうだけど」
らっだぁは本へ視線を戻す。
レウはため息を吐いた。
結局。
今日も鹿だった。
火を起こす。
鍋を出す。
肉を切る。
最近では、かなり慣れてきた。
最初の頃は包丁を持つだけでも少し怖かった。
今では手際よく切れる。
「危ないよ」
突然、らっだぁが言った。
「何が?」
「手」
「切らないよ」
「切るかもしれない」
「切らないって」
「昨日切ったじゃん」
「……あれはちょっと手が滑っただけ」
「今日も滑らせそう」
「じゃあ見ててよ」
「見てる」
らっだぁは本を閉じた。
そして本当にこちらを見てくる。
じっと。
「……」
「……」
「やりにくい」
「なんで?」
「見られてると緊張する」
「じゃあ見ない」
らっだぁが目を逸らす。
レウは少しだけ笑った。
「それもそれで寂しいな」
「どっちなの」
「知らない」
らっだぁも笑った。
しばらくして、肉が焼ける音がしてきた。
ぱちぱちと火が鳴る。
香ばしい匂いが食堂に広がっていく。
らっだぁは椅子に座ったまま、ぼんやりと火を見ている。
「ねえ」
「何?」
「料理ってしたことある?」
「ない」
「一回も?」
「ない」
「じゃあ、今までどうしてたの」
「食べてない」
「……」
レウは呆れた。
「それ、生活って言わないよ」
「そう?」
「そうだよ」
「でも生きてた」
「そういう問題じゃないって」
らっだぁは首を傾げる。
本当に分かっていないらしい。
さすがヴァンパイア。
レウは鍋をかき混ぜながら、少し考える。
「じゃあさ」
「うん」
「今度、一緒に作ろうよ」
らっだぁが瞬きをする。
「料理?」
「うん」
「俺が?」
「そう」
「できないよ」
「俺も最初できなかった」
「でも今できてる」
「だから教える」
「……分かった」
少しだけ。
嬉しそうだった。
食事ができた。
テーブルに皿を並べる。
二人分。
スープ。
パン。
鹿肉。
それから、森で採ってきた果物。
らっだぁは自分の前に置かれた皿を見る。
「多い」
「いつもあんまり食べないから」
「食べなくても平気だから」
「少しくらい食べてよ」
「面倒」
「またそれ?」
「うん」
レウは呆れながら、自分の皿を引き寄せる。
「じゃあ俺が食べる」
「どうぞ」
「……」
「……」
「一個くらい食べない?」
「食べない」
「頑固だなぁ」
「レウもね」
「俺は普通」
「そうかな」
「そうだよ」
らっだぁが笑う。
レウも笑う。
そんなやり取りをしながら、ふたりで食事を始める。
「美味しい」
「そう?」
「うん」
「よかった」
らっだぁはそう言った。
レウは少し驚いた。
「なに?」
「いや」
「なに?」
「……なんでもない」
「変なの」
「そっちに言われたくない」
また笑う。
静かな食堂。
二人の声。
食器の音。
火の消える音。
以前は何もなかった場所に。
少しずつ音が増えていた。
食事が終わった後。
レウは皿を片付けていた。
らっだぁも珍しく立ち上がる。
「何してるの?」
「手伝う」
「え」
「手伝う」
「……大丈夫?」
「何が?」
「急にどうしたの?」
「料理、一緒に作るって言ったから」
「それは今度の話だけど」
「今度の練習」
「練習?」
「うん」
らっだぁは皿を一枚持つ。
レウはそれを見る。
なんとなく危なっかしい。
ものすごく。
「……落とさないでね」
「落とさないよ」
「ほんと?」
「たぶん」
「たぶん!?」
レウは慌てて皿を受け取る。
「やっぱ危ないって」
「大丈夫なのに」
「今の言い方で信用できるわけないでしょ!」
「そう?」
「そう!」
らっだぁが笑う。
レウも呆れて笑う。
結局。
皿洗いはレウがほとんどやった。
らっだぁは横で見ていた。
「手伝うんじゃなかったの?」
「見守ってる」
「それ手伝いじゃない」
「応援してる」
「もっと違う」
「頑張って」
「……」
レウはため息を吐く。
でも。
少しだけ楽しかった。
その後。
二人で食堂の椅子に座った。
何をするでもない。
ただ座っている。
レウは天井を見上げる。
高い。
いつも通り。
「ねえ」
「ん?」
「ここ、最初は怖かった」
「この城?」
「うん」
「今は?」
「……ちょっと広いくらい」
「怖くない?」
「うん」
少し考える。
「らっだぁがいるから」
らっだぁが黙る。
レウはそのまま天井を見ていた。
「最初はさ」
「うん」
「どこ歩いても誰もいなくて」
「うん」
「声出しても返事なくて」
「うん」
「すごく広くて」
「うん」
「怖かった」
らっだぁは何も言わない。
「でも今は」
レウは周りを見る。
椅子。
机。
棚。
花。
本。
二人分の食器。
少しずつ増えてきたもの。
「狭くなった気がする」
「狭い?」
「うん」
「物が増えたから?」
「それもあるけど」
レウは笑う。
「ちゃんと返ってくる声があるから」
らっだぁが少しだけ目を細めた。
「……そっか」
「うん」
しばらく沈黙する。
それから。
らっだぁがぽつりと言った。
「俺も」
「え?」
「最初より、狭く感じる」
レウは少し驚く。
「ここが?」
「うん」
「なんで?」
らっだぁは少し考える。
「……分かんない」
「またそれ?」
「うん」
「便利だね、その答え」
「そう?」
「なんでもそれで済ませられる」
「便利」
「自分で言うなよ」
らっだぁが笑う。
レウも笑う。
しばらくして。
レウは立ち上がった。
「部屋戻るね」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみ」
数歩歩く。
それから。
レウは振り返った。
「らっだぁ」
「何?」
「明日も一緒に食べよう」
らっだぁが瞬きをする。
そして。
「うん」
と頷いた。
部屋へ戻る。
扉を閉める。
静かになる。
ベッドに腰掛ける。
今日も。
何も特別なことはなかった。
森へ行ったわけでもない。
新しいものを見つけたわけでもない。
大きな出来事もなかった。
ただ。
一緒に料理をして。
一緒に食べて。
一緒に笑った。
それだけ。
なのに。
なんだか満たされていた。
レウは机の上を見る。
森で拾った石。
乾いた花。
本。
小さな皿。
いつの間にか増えたもの。
その中に。
今日の思い出も加わった気がした。
「……明日もか」
小さく呟く。
明日も。
同じように起きて。
同じように食堂へ行って。
らっだぁと話して。
何かを食べて。
笑って。
眠る。
そんな日が続く。
そう思っていた。
それが。
当たり前になると思っていた。
だから。
その夜。
レウは安心して眠った。
明日もきっと。
二人分の皿を並べるのだと。
そう思いながら。
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