7月2日
朝起きると秘書がすぐ玄関のそばで待っていた。あと2日で次はアメリカの準備をしなければならないとのこと。どうにも、 うちの部署は期限が迫らないと動かないシステムのようだった。よく眠れていない体にカフェインを突っ込んだせいか、体にだるさが生じてきた。
「アルフレッドー。私会場の視察に行ってくるけど、どうする?」
「行く!!」
「ジョーンズ!困ります!書類を片して頂かないと,,,,,,これだけは私たちではできないもので、!」
「すぐ戻るからー!」
「ジョーンズ!!」
エレベーターの中でネクタイのしめを和らげる。フーっとため息をついているとエミリーに何かを口に突っ込まれる。
「ゲホッ!なんだい!?」
「え?あっアルフレッドはタバコ吸わないんだっけ。ごめんごめんw 」
「吸わないよ!誰の話してんのさ!」
「やー、今の顔がね?見回りとかいってたら街にいる疲れたリーマンそっくりで!みーんなスパスパしてたし。」
「みんながみんなそうと思わないでくれ,,,,,,大体どこでそんな思考回路が出来上がるんだい?俺はリーマンじゃないよ!」
「ただ、そっくりってだけ」
「?そうかい」
屋外の会場に行くも、まだ雨が続いており芝生エリアには立ち入れなかった。ただ、飾りや 設備 だけは確認をする。
「雨が上がらなかったとしても、吊るしておいてくれよ。」
「はい。」
部下に指示を出し終えると、また帰らなければならない。足取りがとてつもなく重くなったところでエミリーのスマホが鳴る。
「え?アルフレッド?いるわよー。」
そういってスマホを渡してくる。
「Hey?」
「よっアルフレッド。お兄さんだぞ〜」
「フランシスかい」
「昨日、電話出れなくてごめんな。何しろお前とは違って飲んでたもので」
「はいはい。でも、なんで俺に用事があるのにエミリーにかけたんだい?」
「ほんとはエミリー側にも用事があったんだよ。途中でお前に切り替えただけ」
「,,,,,,あっそ。じゃ、教えてくれるんだね?あのチケットの意味はなんだい?」
問いかけたものの、沈黙が続く。通話画面を見てみると、フランシス側がミュートになっていたのである。
「はぁ!?」
「あぁごめんごめん。アーサーのことだよな?まぁ,,,,,,楽しみにしといてくれ。」
「それフランソワーズにも言われたぞ!包み隠さず言ってくれないか?」
「そうだなぁ,,,,,,まぁ言わない方が可哀想だしな?言っといてやるよ。」
「言い方がムカつくんだぞ、」
「なんで、俺があの眉毛のチケットを入れたのか。お前も考えたはずだろ?これはひっかけでもしかしたらフランソワーズのものなのかもしれないって。」
「まぁ、少しは。」
「だが【予感】がしたから眉毛のものだと仮定をたて、フランソワーズの証言で確定させた」
「うん」
「きっとお前のその予感は正しい。結果はどうなるか、俺にも分からないが悪い方向には倒れることはないだろう。安心して建国祭を迎えるといい。」
「俺には、ただそこで待っていろと?」
「別に動いてもいい。それで後悔が残らず、そして仲が悪化するとしても良いというならな」
「,,,,,,そう」
「あっこれエミリーにも言えよ?元々これをあの子に伝えようとしてたんだから。じゃーな」
「はいはい」
プツッと切れた通話にフーっとため息をついてエミリーにスマホを返す。
「兄さんよね?なんて言ってたの?」
「あー、どうやら今年はアーサーがアメリカ国内に来ているらしい。いつもはイングランド内で祝辞とかそんなもんだったのにね。」
「えっ。アーサーが?」
「アリスも,,,,,,来てるんじゃないのかな」
「,,,,,,そう,,なのね」
アリス。アーサーと同じくイングランドの化身である。俺がマシューと一緒にアーサーに育てられたように、エミリーはメグと一緒にアリスに大切に育てられてきた。でも、俺は独立前後、彼女たちが何をしていたのか知らない。戦争中、彼女は後方支援に回っていたし、エミリーが突然髪を切ってきたくらいしか知らないのだ。
エミリーと一緒にまたエレベーターにのっているが、行きと違ってエミリーはずっとスマホを黙って見ている。
そういえば、俺がワシントンや軍人と独立の話していたときエミリーはどこにいたのだろう。
そんなことを考えているといつの間にか部署の前についていて秘書が待ち構えていた。
「待っていましたよ!ほら!これです!」
渡されたのは国の参加指名名簿。各国の首脳ではなく、化身側の名簿である。
「首脳陣は私たちでまとめられますが,,,,,,そちらは干渉ができないのです。これが全てですので、今日中に整理し終えてください!」
エミリーにも山ほどの名簿が手渡され共にため息をつく。どうやら、いつもは男性だけであったのが、今年はどこの国もひと国2人もくるらしい。日本でさえ、菊と桜も参加すると返事を返していた。その確認が終わったのは夜20時であった。エミリーが終わったーと名簿を渡してきたのでここから最終確認に移らなければならない。見返していると、ある国から返事が着ていないのに気づく。
「エミリー。イングランドのものは混じっていなかったかい?」
「え?アルフレッドのほうにあるんじゃないの?てっきり,,,,,」
「「,,,,,,」」
そこからまた山の名簿の中から探したものの、イングランドのものは見つからない。
「イングランドですか?渡したものが全てなのでなければ,,,,,,不参加、ということでは」
「え?でもそんなわけ,,,,,,」
秘書がこういうのも無理はない。
アーサーは毎年この時期は体調を崩す。国内の情勢関係なくだ。アリスはそんなことはないが、やはりアーサーの近くにいないといけないようでアメリカ国内にいて祝ってもらったことはない。一度も。俺とエミリーは2人が来ていることを知っているから疑問に思うのだ。
「,,,,,,そうかい。ありがとう」
自室に戻り、再度フランシスに連絡をとるものの、既読すらつかない。フランソワーズにも。エミリーに「あんたがメンヘラみたいだから愛想つかされたんじゃないの?」と煽られたが、エミリーが連絡をとろうとしても同じ結果であった。どこのホテルにいるのか、調べようにも分からないため八方塞がりであった。2人して夜中の部署内で頭を抱えていたところ、ピコンとスマホが鳴る。フランシスからだった。そこには、ただ一言。ホテル名が書かれていた。一喜したものの、夜も更けてしまったので明日行こうとエミリーと話をつけて自室に戻り、ベッドにダイブする。不思議とすぐに寝つけた。
しかし、その日、懐かしい夢を見た。
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