テラーノベル
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美月は海斗の前に立つと言った。
「私の髪が長ければラプンツェルみたいにしたのに」
その言葉を聞いて思わず美月を抱きしめたい衝動に駆られる。
そんな海斗の気持ちには気づかずに美月は続けた。
「今日はもう仕事は終わったの?」
「ああ、今日は少し早めに帰れたよ」
「屋台のラーメン久しぶり」
「うん、そろそろ食べたくなるよな。行こうか」
海斗は美月と手を繋ぐとゆっくりと歩き始めた。
美月の指には海斗が贈ったダイヤモンドの指輪が光っていた。
海斗はその輝きを見ていると心が満たされた。
美月と海斗が出逢ってから初めて食事したのが屋台のラーメンだった。
二人はその思い出の屋台へ向かう。
そこで美月が言った。
「うちのお母さんが雑誌を記念に買ったって」
美月は可笑しそうに笑う。
「記事の内容見た?」
「うん、今日帰りにコンビニでちらっと見て来た。銀座でも撮られていたのね」
「うん。でもあの店プライベートな事は言わないでいてくれたみたいだね」
「そんな感じのお店だろうなと思ってた。なんか誠実な感じがしたもの」
「俺もそう思った。素敵な店だからまた行こうね」
海斗の言葉に美月は嬉しそうに頷く。
「そう言えば兄貴から電話が来たよ。今度実家に美月を連れて来いって。仕事が落ち着いたら行こう」
海斗が言ったので美月は「うん」と頷いた。
5分ほど歩くと屋台が見えてきた。
いつものように柔らかなランタンの灯が辺りを照らしていた。
今日はCDラジカセからジャズが流れている。
白髪交じりの店主は二人が手を繋いで歩いて来るのに気づいた。そして優しい笑みを浮かべて二人を迎える。
「よういらっしゃい。なんかお前さん今日ワイドショーで騒がれていたぞ。うちのかーちゃんが見ていてなぁ。結局二人はあの日以降ラブラブかい?」
「ああ、俺達婚約したよ。だからおやっさんに報告しに来た」
海斗は繋いでいた手を持ち上げて美月の指に輝く指輪を見せた。
「おお、そりゃめでたいな。おめでとうさん」
店主はニコニコしながら屈んで何かを取り出した。
見ると手にワインを持っている。
「これは俺からのお祝いだ」
店主はそう言ってワインを開けた。
「ワインもあったのか!?」
と、海斗が驚くと、
「いや、これは特別な時用だ」
と言って微笑む。
店主はグラスを三つ用意して赤ワインを注ぐ。それから三人で乾杯をした。
それからラーメンを作り始める。作りながら夫婦円満の秘訣を二人に伝授してくれた。
女房が怒っていたら自分が悪くなくても男が謝れ! 記念日には花束を贈れ! その他にも妻を喜ばせる方法を海斗に伝授する。あまりにも店主が面白おかしく話すので、海斗と美月はずっと笑いながら聞いていた。
中でも一番笑ったのは、喧嘩していた妻の機嫌をとる為にベッドでサービスしようと布団の中に潜り込んだら思いっきり蹴りを入れられたという話だ。
海斗と美月は涙を流して大笑いした。
そしてラーメンが出来上がった。
「はいよ、ラーメン二丁」
熱々のラーメンを二人の前に置いた主人は、また煙草を吸いにベンチへと移動した。
二人は思い出のラーメンを食べながら楽しく会話を続けていた。
週刊誌の記事についてや張り込みの車の話、そしてバンドメンバーの反応などを海斗が細かく教えてくれる。
メンバーの中島が実はバツ2で今は3回目の結婚だと海斗が話すと美月が驚く。
「中島さん3回目なの!?」
その時CDラジカセからは「Moon Love」が流れてきた。
そして二人は驚いて顔を見合わせる。
「お、また魔法か? 俺は今日2回目だ!」
「私はまだ1回目」
そこで二人は声を出して笑う。
そんな仲睦まじい二人の様子を、ベンチから店主が穏やかな顔で見つめていた。
先日満月を迎えた月はだいぶ欠けていた。けれど月明かりはまだまだ明るくパワーに満ち溢れていた。
月は今夜も二人を見守っている。
「今日は報告に来てくれてありがとうな」
ラーメンを食べ終えて帰る際屋台の店主が言った。
二人は笑顔で「また来ますね」と言って屋台を後にした。
二人は美味しいラーメンに満足してゆっくりと歩く。
こうして肩を並べて歩いていると出会ったばかりのあの日を思い出す。
あの夜は満月が川に映りこんでいた。二人はその時の情景を同時に思い出していた。
「コーヒーでも飲んでいく?」
アパートの前に着くと美月が言った。
もちろん海斗は頷いて二人は階段を上って行った。
部屋に入ると美月はすぐにコーヒーの準備を始める。
海斗はダイニングチェアに座り美月の様子を見つめていた。
「なんかそんなに見られると恥ずかしいわ」
美月が笑いながら言う。すると海斗は立ち上がり美月の傍へと近づいて背後から美月を抱き締めた。
密着した海斗は美月の耳の裏にキスを始めた。最初は焦らすようなキスだったがそれは徐々にキスは激しくなり、美月の耳や首筋を攻め立てる。
あまりの刺激に膝がガクガクして立っていられなくなった美月は、
「コーヒーがこぼれちゃうわ」
囁くように言ってから身をよじった。
それが海斗に火をつけた。
海斗はいきなり美月を抱き上げるとベッドまで行きそっと降ろした。
そして美月の上に覆いかぶさるように横たわると、しばらく美月の顔をじっと見つめる。
その瞳を見ていると吸い込まれそうだった。
そして美月は思った。この人はなんて魅力的なのだろうと。海斗に見つめられたら全ての女性は金縛りにあったように動けなくなっていまうのではないだろうか?
その時美月の唇に海斗の唇が重なった。
最初は優しかったキスも徐々に熱を帯びてきた。それと同時に美月の口から切ない吐息が漏れる。
美月の頭は真っ白になり、海斗の情熱に溺れないようにする事で精一杯だった。
美月はこの日初めて海斗に抱かれた時よりもさらに深く激しい未知なる世界へ連れて行かれた。
それはこれまでの美月の経験がいかに浅く薄っぺらいものであったかを示すような素晴らしい経験だった。
この夜美月は勢いの止まらない海斗に何度も何度も愛された。
コメント
7件
ラーメン屋のおっちゃんの夫婦円満の秘訣が👍👍👍ベッドで……🤣メッチャおもろぉい🤣 ワイン🍷の粋な計らいも、こうなることがわかってて用意してくれとったんかな(*´艸`*)🩷🩷🩷素敵✨ こんな心温まる日の夜は…そりゃ燃え上がるやんな❤️🔥❤️🔥❤️🔥キャァー🤭
自分が大切な人や店を裏切らない海斗さんな✨ 初めて2人で訪れた親父さんのラーメン屋🍜でお祝い🍷してもらえて、きっと初めて来た時からわかってた⁉️🤭💕 それに海斗さんのお兄さんからのご実家訪問連絡📱‼️2人ともワクワクドキドキですね☺️💓 そして今宵は🌙夜のマジックに魅せられて2人の熱く甘く長い夜が2人を一層昂らせてひととき我を忘れて互いに溺れる2人💕❤️💞キュン🫰
おやっさんの気持ちが嬉しい🥹わかっててもフツーに接してくれて、きっとおやっさんは、はじめて美月ちゃんを連れて来た時からこうなると思っていたんだと思うな。 今夜も月🌕が2人を特別な魅惑の世界に導いてくれるね♥️✨♥️✨