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告白って、もっと特別な場所でするものだと思っていた。
夕焼けの下とか、放課後の校舎裏とか、誰もいない静かな場所とか。
でも、現実は違った。
定期テストが終わったあとの二十分休み。
ざわざわした教室。
友達の笑い声。
机を動かす音。
その中で、琉叶(るか)は手紙を握っていた。
小さく折りたたまれた紙。
何度も読み返した文字。
何度も書き直した文章。
「優しいところが好きです。
もしよかったら、私と付き合ってください。」
それだけの文章なのに、書くまでに何時間もかかった。
消して、書いて、消して、書いて。
言葉を選んで、整えて、震えながら完成させた。
相手は、洸(ひかる)。
同じクラスの男の子。
優しくて、穏やかで、よく笑う人。
スマホを持っていないから、LINEもできない。
連絡手段もない。
だから、手紙だった。
逃げ道のない告白。
教室の隅で、友達に囲まれて話している洸を見て、心臓がうるさくなる。
――今行かなきゃ。
そう思ってるのに、足が動かない。
手が震える。
呼吸が浅くなる。
頭の中が真っ白になる。
それでも、琉叶は歩いた。
一歩。
また一歩。
距離が縮まるたびに、世界の音が遠くなる。
洸の前に立った。
顔を上げた洸が、不思議そうな顔でこっちを見る。
琉叶は、何も言わずに手紙を差し出した。
「……これ」
声が震えた。
洸は一瞬戸惑って、でも、受け取ってくれた。
手紙は、確かに彼の手に渡った。
その瞬間、世界が一瞬止まった気がした。
何かが終わって、何かが始まった気がした。
琉叶は、何も言えずに、そのままその場を離れた。
振り返れなかった。
見る勇気がなかった。
ただ、心臓の音だけがうるさかった。
告白した。
それだけで、十分だった。
結果はまだわからない。
返事もない。
未来もわからない。
でも、
「想いを渡した」という事実だけが、
胸の中に残っていた。