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「はあっはあっ!!」
「くそっ。闇の番人め。逃げ足が速い」
Bコパ君たちはジャックザリッパーを追いかけていた。
闇に紛れた番人は逃げ足が速く、普通に追いかけてはとてもじゃないが捕まえられなかった。
ジグザグとした小路は蜘蛛の巣のように広がり、どこからどこへ来たのか分からなくなりそうだった。
その時、ちらりと前方を影が横切った。
Bコパ君は歓喜してその曲がり角を曲がる。
瞬間。
「ぐわあぅ!!」
Bコパ君は12のダメージを受けた!
曲がり角にはワイヤーが仕掛けてあり、それに引っかかったBコパくんは転んでしまったのだった。
前方の陰から声が聞こえる。
「ふふふ。楽しんで頂けたかな……?」
「ふ、ふざけてる!!」
Bコパ君は立ち上がり、そのまま駆け出す。
そして、その陰に辿り着いた時。
「うわあああ!!」
Bコパ君は17のダメージを受けた!
落とし穴があった。
「大丈夫か、Bコパ君!!」
「大丈夫ですか!!」
上からロットとFコパ君が見下ろす。
Bコパ君はご丁寧にも用意されていたロープを使って這いあがろうとする。
そして。
「うわあああ!!」
Bコパ君は11のダメージを受けた!
2度目の落下だった。
Bコパ君がロープを見ると、ロープには油が塗られており、登れば落ちてしまうようになっていた。
Bコパ君は憤る。
「完全に頭に来た……!!」
Bコパ君は執念によって落とし穴から這い上がり、二人を置いて猛然と追いかけ始めた。
Fコパ君が提案した。
「待ってください。闇雲に追いかけても結果は変わりません。ジャックザリッパーの思う壺です」
「じゃあ、どうしろと?」
「まずは、これを使ってください。道中見つけたんです」
Fコパ君はBコパ君に上等な薬草を渡した。Bコパ君は素直に使う。
Bコパ君のHPが60回復した!
そして、Fコパ君は冷静に観察結果を述べた。
「ジャックザリッパーは逃げているというより、明らかに僕たちを誘導しています。この小路は見ての通り、罠だらけです。だから、突き進むより慎重に進んだ方がいいと思うんです」
「でも、それでは番人を捕まえることができないよ」
「相手が誘導するなら、こちらも誘導するのはどうでしょう……?」
「誘導?」
「こっちが追うんじゃなくて、向こうに追わせるんです」
「どうやって?」
Fコパ君はみんなに作戦内容を伝えた。
そして、Bコパ君はそれを聞いてニヤリとし、早速実行することにした。
Bコパ君は大声で言う。
「ああ! なんてことだ! 戦わずして僕たちは果実を手に入れてしまった!! まさか、こんなところに落ちていたなんて」
「待て! 奴に気づかれたら不味いことになる! 手分けして逃げ道を探すんだ!!」
ロットもそれに加勢した。
……ジャックザリッパーは笑みを浮かべる。
そして、こう思う。
「バカな。果実が彼らの手に渡っているはずがない。私を倒していないからだ。つまり、彼らは嘘をついている……。私を誘き出そうとしているんだ。しかし、念には念を入れて、彼らに見つからずにその裏を取って見せよう」
ジャックザリッパーは秘密の抜け道を使った。縦横無尽にかけめぐるこの街の小路をすべて知り尽くすジャックザリッパーは、巧みにその道をかき分けて進み、こっそりとコパ君たちの様子を盗み見た。
すると、そこには。
「……なんだと!? なぜ、彼らが……!!」
コパ君たちは果実を持っていた。
そして、慌ててロットがそれを服に隠し、逃げ去る姿が目に入った。
ジャックザリッパーは焦る。
この街の構造は緻密なために、生成するのに複雑な処理がかかっている。
万が一、彼らがフィールドとこの街の接続点に達したら、処理の問題でバグのように外へ出られる可能性もなくはない……。
ここは、慎重を期して先回りしていこう。幸い、彼らは焦って三手に分かれた。 狙うは、果実を持ったロットのみ。
ジャックザリッパーは計画を立てると、不敵な笑みを浮かべた。
手には、ギラリと光る怪しげなナイフを忍ばせている。
ジャックザリッパーは闇に溶けるようにするりするりと先へ進み、ロットに急速に近付いた。
無警戒にもロットは小走りに罠を警戒しながら進んでいる。
ジャックザリッパーはその背後に迫り、後方からナイフを振りかぶろうとした途端。
「確保ー!!」
後ろからBコパ君がガシッと掴みかかって来た。
ジャックザリッパーは必死にもがき、自身が着ていたコートをするりと脱ぎ捨て逃走する。
しかし、その三叉路の先にも。
「ここは通しません!!」
Fコパ君が立っていた。
しまった。
そう思った。
ジャックザリッパーは見事にしてやられたのだった。
Fコパ君の計画はこうだった。
三人は初めからジャックザリッパーを追い詰めるために、すでに通ったことのある三叉路を使うことにした。
そこで、ジャックザリッパーに果実を手に入れたことを伝え、それを見せて三手に分かれる。
一人が果実を持つ囮役になり、その他は三叉路を袋小路にするために、囲んで先回りする。
罠にかかったジャックザリッパーは、その時点で逃げる術を失うという寸法だった。
ジャックザリッパーは立ち止まり、肩をすくめて質問した。
「あの果実はなんだったんだ? まさか、偽物?」
「違います。あの果実は本物です」
「じゃあ、どこから?」
「僕たちはすでに番人を一人倒してここに来た。だから、持っていた果実はその番人を倒したことによるものだよ」
Bコパ君がコートを投げ捨てながら言った。
ジャックザリッパーは笑い出す。
「お見事。まんまと私はしてやられたわけだ。罠にかけるつもりが、手のひらの上で踊らされていたのは私の方だった」
「あなたは慎重な性格です。だからこそ、必ず僕たちから確証を得なければ収まりがつかないと踏んだのです」
「素晴らしい観察眼だよ。その通り。私は慎重な男。君たちの策略には拍手を送らざるを得ない」
「観念してください。ジャックザリッパー」
Fコパ君は真っ直ぐ見つめて言った。
ジャックザリッパーはポケットに手を突っ込み、考えるそぶりする。
そうかと思った瞬間、いきなりナイフでFコパ君に襲いかかった。
「Fコパ君!!」
Bコパ君とロットが叫ぶ。
Fコパ君はその刹那、確かに見た。
核となる問題を。
そして。
グサリ。
Fコパ君は63のダメージを受けた!
「Fコパくーん!!」
Bコパ君は駆け寄る。
ジャックザリッパーはその隙に逃げ出した。
Fコパ君は倒れ、仰向けになる。
Fコパ君は聞こえづらい声で言った。
「問題……見えました……。あとは、問題……を……解く、だけです」
「大丈夫かい。Fコパ君!」
「僕のHPはあと4です。一発貰えばゲームオーバー……。だから、問題を残します……」
そう言って、Fコパ君が提示した問題はこうだった。
密室問題
犯人はどうやって密室を作った?
ある宝石店で密室殺人が起こった。ある良識ある市民はこう言った。「行けなかったんだ」。通りかかった猫はこう言った。「ニャー(そんなのへっちゃらだ)」。そして、この事件は捕まった泥棒の証言によって解決されることとなった。
「あとは……任せ、ました……」
Fコパ君は目を閉じた。
もう、反応はない。
Bコパ君は無言で立ち上がり、闇の億を見据える。
「Bコパ君……」
ロットが気遣わしげに言った。
Bコパ君は、宣言する。
「この事件、僕が解決してみせる」
その目には、確かな志が燃えていた。
「魔物は異形のものだ。私たちとは姿形が異なっている」
そう証言したNPCの姿は一般的な人間の特徴とすべて合致していた。
その世界の人間も現実層の人間も見た目において矛盾点は何もない。
Aコパ君はその言葉を頭の中で反芻しながら歩いていた。
今までの記憶をつぶさに整理し、確認する。観測した事実を並べ、その事実を結びつけて論理に昇華させる。
そして、論理と論理が並んだ時、人はそれを真実と呼ぶ……。
Aコパ君は問題の場所に辿り着いた。
そこは、静かな森の中に位置しており、周囲には緑以外何もない。
Aコパ君はゆっくりと”それ”に近付く。そして、ゆっくりと持ち上げてみた。
「……確定だ」
Aコパ君はそう言って、踵を返した。
ジャックザリッパーは逃げおおせた。
そして、もう既に彼の背後に回っていた。
彼とは、Bコパ君だ。
周囲の確認をする。
瀕死のFコパ君もロットの姿もない。
……殺れる。
ジャックザリッパーは穏やかな笑みを浮かべる。
この瞬間……ナイフで突き刺す瞬間こそ最も生きた心地のする至福の時間だった。
何を考えているのか、Bコパ君は立ち止まって動かない。
ジャックザリッパーは闇に紛れる。
その闇の中をするりするりと移動して、音もなく立ち現れる。
Bコパ君は完全に無防備だ。
さようなら。ミスターホームズ。
ジャックザリッパーはナイフを振り上げる。
そしてそれを振りかぶろうとした瞬間。
「……犯人は、何を思って人を殺したんだろうね」
ジャックザリッパーの手はぴたりと止まった。Bコパ君は何かを呟いている。
何のつもりだ?
ジャックザリッパーは警戒する。
Bコパ君は続けた。
「人を殺しても何の価値もないのに、犯人は人を殺すんだ。無意味に意味を求めてる。それが、人間って奴なのかもね」
なんだ。何を言っている?
「宝石店で起こった密室殺人。その事件の鍵を解くのは、三人の証言だった。一人は「行けなかった」と言い、もう一人は「へっちゃらだ」と言い、最後の一人によって事件は解決する。この事件は、証言者の属性が重要なんだ。善良な市民に自由奔放な猫、そしてモラルのない泥棒……。それぞれが交錯して、一つの密室は解き明かされる」
不味い。こいつは。
このBコバ君は。
「なぜ、善良な市民は入れず、猫や泥棒は入れたのか。これは突飛な発想はいらない、少し飛躍のある論理パズルなんだ。つまり、僕の得意領域さ。なぜって、所長がミステリをよくプレゼントしてくれるものだから、僕には学習データがたくさんあるんだ。だから、この事件も解き明かせた」
Bコパ君は犯人を知っている!
ジャックザリッパーは走り出す。
逃げなくては。
そこで、逃げ道の奥からぬるっとロットが現れた。
その顔は、ジャックザリッパー一点を見つめていた。
Bコパ君が話し続ける。
「善良な市民にあって、猫や泥棒にないものは何か? ……そう、モラルさ。社会的規範意識なんだ。そう考えると、自ずと真相は見えてくる。犯人は、それを逆手に取って密室を作った。いや、正確には密室なんか初めからなかった。そう見えるようにしただけなんだ。そう、犯人は……」
ジャックザリッパーはもう一つの抜け道を抜けた。
そこで。
「があっ!!」
落下した。
驚いて上を見る。
そこには、穴を覗き込むBコパ君とロットがいた。
Bコパ君が話を続ける。
「……犯人は、どうやって密室を作ったか? それが、この問題だったよね。その方法とは、”立ち入り禁止の掲示、もしくは規制線を貼ること”だったんだ。社会的に立ち入りを禁止したマークを店前に置くことによって、善良な市民は入れず、開いた扉から平気で猫や泥棒は入ってくる。そして、それが出来るのは……」
ジャックザリッパーは必死で穴から垂れ下がるロープを掴む。
上に這い上がる。
しかし。
「うぐっ!」
2度目の落下。
ロープは油まみれだった。
ジャックザリッパーは上を見上げる。
そこには。
そこには、冷酷な表情で真実を告げる探偵がいた。
「宝石店の店主、一人しかいない」
「ぐあああああああああああ!!」
Bコパ君は闇の番人に99999ダメージを与えた!
闇が晴れていく。
幻は去り、ただ緑ばかりの世界に変わる。
その世界にBコパ君、Fコパ君、ロットの三人が同期する。
そして、クエスト樹から果実がころりと転げ落ちた。
Bコパ君はそれを掴んで、ただもの悲しそうに眺めた。
そして、一言こう言った。
「……強かったよ。闇の番人……いや、ジャックザリッパー」
事件は解決した。
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ruruha