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ヴァールは困惑した様子で男を見つめていた。
「….兄さん」
カキンッ…
ヴァールの兄は鞘に剣をしまい、辺りを見渡す。
「…これがお前のしたかったことか?」
そう冷たく呟くと、兄は孝典の傷口を凍らせ、ヴァールの顔を見ずに去っていく。
「…….」
ヴァールは己の力不足を痛感していた。
「ヴァール…!タカノリが!」
「あぁ、急いで王国に戻ろう!」
ヴァールたちは、負傷した三人を担ぎ馬車に乗せ、王国へ向かった。
「タカノリさん、絶対に助けますからね…!」
移動している間も、メレナは孝典にハイヒールをかけ続けていた。
ミリアが不安な表情でその様子を見ていた。
「傷口が深いけど、氷のお陰でミストウォーカーの魔力の動きを止めてくれてるわね」
しばらくして、王国が前方に見え始めた。
ヴァールがプレートを見せ検問所を通過する。
――― 一方その頃、王国内。とある部屋
机に両脚を乗せ、煙草を吸っている眼鏡の男がいる。
フゥーー…
「ん…?」
男は開いた窓を見つめ、目を閉じ鼻を利かせた。
「….損傷が激しいな」
立ち上がった男は煙草の火を消し、ポールスタンドから白衣を手に取った。
「はぁ〜、治せっかなぁ」
ガチャン…
白衣に腕を通し、部屋を出た。
「もうすぐ回復魔法師団の治療院に着きます…踏ん張ってくださいねタカノリさん!」
ヴァールは孝典の手を握っていた。
―――「こっちだ、」
回復魔法師団の建物の入口には、眼鏡の男と二人の部下が立っており、ヴァールたちを案内した。
「腹を貫かれてるやつを地下へ運べ」
「〝了解しました〟」
部下たちは担架で孝典を建物の中へと連れていった。
「悪ぃが、あとの二人は他のやつに診させる。中に入って待っててくれ」
そういうと、男は建物の中に入っていった。
マートンとトロイを建物の中の長椅子に寝かせた。
「くっ…腕と肋骨が折れてやがる」
トロイが起き上がろうとする。
「無理するなトロイ…!」
「タカノリを…危険な目に合わせちまった…..」
トロイの目には涙が浮かんでいた。
「大丈夫だ、ここの人達を、タカノリさんを信じよう」
――― 一方その頃、治療室では
ウィーン…
部下が機械のボタンを押すと、部屋の中に結界が張られた。
「始めるぞ」
そう言うと、男は孝典の腹部の傷口を覗き込む。
出血は止まり、周囲は赤黒く染まっていた。
まず、その傷口を覆っている氷を取り除き始めた。
「御丁寧なこった。氷に微弱ながら回復魔法を混ぜてやがる…」
氷を取り除くと、男は傷口に手を伸ばす。
だが――傷口からミストウォーカーの薄黒い魔力が滲みだした。
「ちっ、めんどくせぇな。蓋をしてたのはこの為か」
男が右手を前に出す。
「〝ルミナス〟」
スキルを唱えると部屋中が白い光に照らされ、孝典の傷口にまとわりついていたミストウォーカーの魔力が薄れていく。
「よし、やりやすくなった」
続けざまにスキルを唱える。
「〝エターナル・ルミエール〟」
損傷していた肉体がみるみる修復を始め、貫かれた腹部の組織が繋がっていく。
「畳み掛けるぞ!」
――――――――――――
孝典の治療を始めてから、2時間ほどが経過していた。
ガチャ…
「お待ちどぉさん」
男が治療を終え部屋の外に出ると、ベンチにはトロイとマートン以外の三人が座っていた。
「タカノリさんは!」
「ベッドで寝かせてる。あと2、3日もすれば目を覚ますと思うぜ」
「ありがとうございます!」
ヴァールは深々とお辞儀をする。
「ところで、このパーティーの魔法使いは誰だ?」
「….?私だけど…」
ミリアは不思議そうに男を見る。
「傷口を凍らせたのはいい判断だ」
ミリアの頭をなでた。
「き…急になによ!」
「残りの二人は明日にでも出てって平気だ」
男はポケットに手を入れ、通り過ぎて行った。
「わかりました」
「むぅ〜….やったの私じゃないし…」
ミリアが膨れた顔をしている。
二人が一安心している中、ヴァールの表情は重かった。
―――――
「…兄さん」
「…これがお前のしたかったことか?」
―――――――――――――
―――翌日
「完全……復活ー!!」
トロイとマートンの傷は回復していた。
「ところで、タカノリは?」
マートンがヴァールに尋ねる。
「今日か明日あたりに目を覚ますらしい」
「そうか…」
部屋に男が入ってくる。
「よっ、会うのは初めてか〝雷龍の鉤爪〟さん方」
「この度はありがとうございました」
ヴァールは椅子から立ち上がり、礼をする。
「よせよ、俺は自分のやるべきことをやったまでだ」
「エルミドさん、昨日なぜ僕たちが来た時に建物の前にいらっしゃったんですか?」
「あぁ、俺鼻が利くのよ。」
「鼻….?」
ヴァールがきょとんとした顔でエルミドを見ている。
「昔から血の匂いに敏感でな、遠くからでも匂いを嗅ぐだけで、どのくらいの損傷度合いかが分かるってわけ」
「なるほど、それで僕たちが来るのを予測してたんですね」
「そういうことっ」
マートンが口を開く
「タカノリは今どこに?」
「あの子なら地下にいるぜ、で….あんたらがそこまで手こずる相手ってなんだったんだ?」
エルミドがヴァールたちに尋ねる。
「ミストウォーカーが出現しました」
「…..マジか…、それなら納得だな。怪我がなかったとはいえ、他の三人も疲労は相当溜まってるはずだ。ゆっくり休みな」
「ありがとうございます」
―――― その頃、
タカノリは地下室のベッドに横たわっていた。
シューシュー…
機械が結界を維持している。
「…………」
――――――――――――――――
(つづく)
《ステータス》
・三田 孝典 (みた たかのり)
・レベル3
・F級冒険者
・【固有職業:きのこマスター】
・【良質級:霧吹き】
【良質級:ゴム手袋(厚手・ピンク)】
・【ウィンドウ】【マップ:レベル2】
【会話:レベル2】【ガチャシステム】
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最後まで読んで頂きありがとうございました!
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〝雷龍の鉤爪復活、そして孝典もついに目を覚ます!〟
次回お楽しみに!
(*・ω・)*_ _)ペコリ
コメント
1件
うわぁ…第12話、めっちゃ重かったけど良い意味で心にきました😭✨ ヴァールの兄さんが冷たく去っていくシーン、ゾクッとしたし、トロイの涙にもグッときたよ…! エルミド先生、煙草吸いながら登場して「鼻が利く」ってカッコよすぎない!?笑 でも何より、孝典が無事で本当に良かった…次回、目覚めるの楽しみにしてるね🌸