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空音
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シュメール
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カタカタ・・・「そうそう・・・私の小説は・・・ランキング上がったかしら・・・」
夜も更け・・・部屋の隅に置かれた洗濯物カゴの上には畳みかけの部屋着が山になっている、桜子は相変わらずパソコンの前に座り、マウスをクリックしながら自分の投稿ページを開いた
桜子は小説講座の生徒に内緒にしていたが、無料の「小説投稿サイト(ハブリスタ)」に密かに自分の小説を投稿していた
実は桜子はヒット作以外にこの10年間で100作品以上は書いていた、そして公募に出しても全落ち、落ちた作品は、こうして素人にまじって、数々の無料の小説投稿サイトに無差別に投稿していた
ハァ~「・・・今日もランキングは30位かぁ~・・・更新しなかったらすぐ落ちるんだから・・・」
画面をスクロールする指先がだんだん忙しなくなっていく、まったく毎日毎日投稿して書いているのにランキング上位にすら掠らない、一体何が悪いのか、桜子は袋に入ったスルメイカを剝いて、奥歯で苛々とかじった
書籍脳の桜子は、Web小説サイトのランキング上位にズラリと並んでいる作品を上から順にクリックしては眺めた
どれを読んでみても小学生の作文のような文章ばかりで、見れば見るほど、どうしてこの作品群がランキング上位か謎でしかなかった、そして最近ではモロAI生成文章ではないかと思われるものだらけだ
桜子はAI生成文章添削業の経験から知っていた、AIの文章は膨大なWeb文章の海のそれこそ何処から引用してきているのか分からないので、出版局はこぞって出版後のトラブル回避の為、AI文章の書籍化は出来るだけしたくない、それに対し、金が欲しい作家陣営はAI生成した文章をあたかも自作の文章だと黙認している、まるでいたちごっこだ
「あっ!春ウララ、また更新してる!この作家、本業もある兼業作家なのに、一体いつそんなに書く時間あるんだろう」
桜子はうなだれた 『春ウララ』とは唯一「ハブリスタランキング上位」で桜子が「面白い」と思える内容を書いている作家だった
プロフィール欄を見ると、彼女は本職を持ちながら、小説は趣味で書いている素人作家だった
素人が趣味で書いているとはいえ、ウララの書く文章は完璧な女性目線の、大人の男女の粋な愛を生き生きと・・・時には胸が苦しくなるほど切なく、感動するストーリーを書いていた
まさに桜子が求めるようなアダルトシーンも満載で、読めばわかる、この作者は男性経験が豊富で、実体験をもとに書いていた
ウララの文章はキャラクターの心情が繊細に描かれて、思わず一人、一人に感情移入して読んでしまい、さらにベッドシーンのヒーローの素敵さにウットリして、自分もこんな風に男性に愛されたいと思ってしまうのだ
この作者のファンになっていると思うのは癪なので認めたくないが、実際彼女はうまかった、そして日々、桜子が更新を楽しみに追っている唯一のWeb小説家だった
「ふんふん、今日も更新されている、読んでやろうじゃないのよ!何書いてるのよ」
そう言ってまたスルメイカをむしゃむしゃ食べながら、画面に顔を近づける、モニターの光が桜子の眼鏡に反射してレンズが真っ白になる
カタカタ
「ふ~ん・・・いい文章書くじゃない!ちょっとこの一節、私の小説にも拝借しちゃお!」
桜子は片手にスルメイカ、片手にマウスを持ったまま、器用にウィンドウをふたつ並べた、左に『春ウララ』の作品ページ、右に自分の投稿画面、ウララの画面をドラッグで文をなぞる
カチッ・・・右クリック――「コピー」「貼り付け」
乾いた音を立てるキーボードの上で、桜子の指がリズムよく踊り始める、カタカタ、カタカタ、ときどきパチンと変換キーを叩く音が混じる
ちょうど今、桜子が毎日投稿している作品に「春ウララ」が書いている文章をパッチワークのようにコピー&ペーストして貼り付けていく
もし自分が盗作している作品が、有名な商業作家の文章なら問題になるかもしれないが、春ウララは素人だ
たとえ素人が「盗作している」と騒いで桜子を批判したところで、何も出来ないだろうと小ずるい事を考える
コメント
2件
桜子〜🥺焦る気持ちはわかるけど…その方法に慣れて果たして歯止めがきくかな?
んー、第11話、読みました。桜子の「素人が騒いでも何も出来ない」という考え方が、読んでいてすごく胸に刺さりました。自分の作品がランキングに入らない苛立ちと、ウララさんの文章への憧れが、盗作という形で表れているのが切ないですね。コピペのシーンの乾いた描写が、彼女の心の空虚さを物語っているみたいでした。次が気になります!