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「うぅ…ここは……?」
意識が戻り、重い瞼を上げる。見回すと、見慣れない部屋の床に寝ていた。
「⁉︎」
動けない……、どういうこと⁉︎
起きあがろうとするも、後ろ手で縛られている。
じたばたもがくことしかできない。
首もズキズキと痛む。
どうして、ここに……?
気を失う前の記憶を思い起こす。
裏路地にはいって、
確か、蹲っている人を助けようと声をかけて……。
そこからの記憶がないことに気づく。
あの時、気絶させられたんだわ。
「!!」
突然、部屋の扉が開き、フード姿の二人連れが入ってきた。
誰?
意識がまだ朦朧としていて、視界がぼやける。
「やっと、目が覚めたのね。相変わらずグズね」
こ、この声は!
まさか、そんなはずは……。
その声を聞いた瞬間、長年身体中に染みついた経験と恐怖から、意識がクリアになる。
体勢を整えたいのに、起き上がることができなかった。
「あはは、いい気味!まるで芋虫みたいね。いいわよ、もっと、も ーっと、足掻くといいわ。
あなたは、そうして、地べたに這いつくばっているのがお似合いなんだから。
ふふふ、そうだわ。
なんなら、そのままの格好でここまで這って進んできなさいよ。
ほら、何してるの? はやく、早く来なさいよ!」
興奮冷めやらぬという様子で、声の主は、パサリと被っていたフードを脱ぐ。
アンジェリカ……。
どうしてここに……。
予期せぬ登場に、顔から血の気が引く。
では、聞き覚えのある気がしたあの女性は、もしかして……。
ゆっくりと視線を動かし、もう一人の人物に焦点をあわせる。
アンジェリカの隣に、控えるように立っているのは、侍女のアンさんだった。
「っ!」
騙されたんだわ……。最初から私を捕まえるための演技だったのね。全部、全部、作り話の嘘だったんだわ。
迂闊な自分が、情けない。
どうして、信じてしまったのだろう……。
「どうして、こんなことをするの……」
「はぁ⁉︎ どうしてですって?」
アンジェリカの目は、血走っており、私の元に近づいてくる。
ドン!ドン!ドン!と、地団駄を踏むように片足で踏みつけてくる。
「あなたが! あんたが! あんたが!あんたが悪いのよ!
迷惑ばっかりかけてきて! 全部、あんたのせいよ!」
「っ!うっ!」
鬼気迫るその様子は、尋常ではない。
アンジェリカが履いていたのが、珍しくハイヒールではないのが不幸中の幸いだった。
ヒールであったなら、身体に突き刺さっていただろうから。
染みついた受け身の習性から、咄嗟に身体を捩り、急所を庇う。
久々の暴力は、平和慣れした身体には堪える。
どうして、こんな酷いことをするの……。
どうしてそこまで、私を憎むの。
憎みたいのは、私の方よ……。
もう、いい加減にして……。
せめて起き上がれないかと考えを巡らせていると、突然、痛みから解放された。
気が治ったのかしら……。
こんなに短時間で気が済むなど考えられない。
恐る恐るアンジェリカの様子を窺う。
普段なら、目が合った瞬間に、暴力をふるわれるのに、アンジェリカは私の視線を受け止めていた。
寝転がる私の側に屈み込むと、アンジェリカは両手で胸ぐらを掴んできた。
髪も振り乱し鬼気迫る様子のアンジェリカに、殺されるのではないかと思った。
恐怖でガクガクと震え、恐ろしいのに視線を逸らせないでいた。
「ねぇ、どうしてくれるの? 邸には騎士が押し寄せて、お父様は連行されていくし。
アンの機転によって逃げられたけれど、
これからどうしたらいいの⁉︎
全部、あなたが仕組んだんでしょ? 逆恨みして、嵌めたのね!
私が何をしたというの? 悪いのはあなたじゃない!
私は何も悪くないわ!
だからソフィア! あんたを絶対許さない!
ふふ、いけない、私としたことが、取り乱すなんてね。
殺してやりたいところだけど、逃げるのに
もお金が必要なの。だから、生かしてあげ
る。感謝しなさい!
ちょっとは、私の役に立ってもらわないと。
いままで、散々、迷惑をかけられたんだもの。そうでしょう?
あなたみないな傷だらけの女でも、相手に
してくれる人がいるみたいよ。ふふふ!良かったわね。
あんたなんか、犯されて売り飛ばされるが
いわ!
じゃあね、ソ・フィ・ア !
もう、好きにしていいわよ。約束通り、この女と引き換えに、報酬をもらってきてちょうだい」
アンジェリカの合図をうけ、アンは部屋から静かに出て行った。
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