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 父上達と別れてからは自由時間となった。

 僕は友達を作るべく移動を開始したのだが。

『ねぇ、なんであの子に声かけちゃダメなの?』

『知らないよ。お父様とお母様が絶対に仲良くしちゃいけないっておっしゃったんだよ』

『……なんか可哀想だね』

『一人ぼっちだねあの子』

 僕……友達できるのかな?

 アレイシアとの一件で悪評が広まってか僕は注目の的であった。

 誰か仲間に入れてくれないかと子供に視線を向けるも目を逸らされる。

 声をかけようと近づこうとすると、

『うわ、あいつこっち来るよ』

『本当にやめてほしい』

 と、このように小声で話し始める。

 貴族は噂好きだよな。全く。

 大人に吹き込まれた子供たちはそれを鵜呑みにしてしまう。

 アレイシアに先ほどの無礼を謝りに行こうとしても、ラクシル様の傍から離れないので近づけない。

 ラクシル様の周りには常に大人たちがいるため子供の僕じゃ近づけない。

 ……それにしても貴族の派閥が出来ているのか、会場内には僕のような孤高の存在は誰もいない

 僕は生涯孤独……いや、生涯孤高の存在かもしれない。

「はぁ……邪魔者は端で一人で過ごすか……あれは」

 ふとあたりを見渡すと会場の窓から偶々ポツリと一人で突っ立っている男の子が見えた。

 ああ……あの子はぼっちなのか。

 これはチャンスかもしれない。

 一人なら話しやすいし、外なら誰の視線も感じることはない。

「すいません、ジュースを2つください」

「はい。かしこまりました。

 僕は近くにいた給仕の女性に頼んで二つのグラスを受け取り、会場の外に向かった。

「こんばんは。少しお時間宜しいでしょうか?」

「君は?」

 僕は一人でいた黒髪の少年に話しかけた。

 少し警戒しているな。

 まずは自己紹介からしよう。

「お初にお目にかかります。キアン=ユベール伯爵の嫡男、アレンと申します。以後お見知り置きを」

「……ヘンリク=パトラス侯爵の3男、レイルだ。……私になんの用だ?」

 それにしても随分と塩対応だなぁ。おお、パトラス侯爵は確か宰相の家名だったな。

 ……随分と大物の家の子と接触できたな。レイルか。そういえばこの子僕の二つ前に陛下と話をしていた子供だ。 

 レイルは僕の倍以上の時間を陛下と話していた。妙に陛下と親しげに話していると思ったら宰相の息子だったからか。

 顔見知りだったのかもしれないな。

 僕は内心思っていた小さい疑問を解消させつつ、レイルに無難な話題を選び話かける。

「いえ、少し会場の雰囲気に酔ってしまい、夜風にあたりに来た次第です」

「君は会場に居づらいだろうね。なんせソブール公爵閣下を怒らせたのだからね。誰も近づかないことだろう」

 このガキ……歳の割に冷静だ。

 しかも知ってたのかよ。随分と正直に物事を言うな。

 ま、その物言いには慣れている。ウェルも思ったことを言うのだ。この場合は流してしまおう。

「そうなんですよ。……視線に耐えきれず。そんな時レイル様をお見かけしまして。レイル様は何故ここに居られるのですか?」

「私にも近づいてほしくないものだが」

「……」

「……」

 なんでこんなに拗れてんだよ。

 お互い沈黙が続く。

 だがこの機会を逃したら友達できないと思うんだ。

 失礼を承知でやっている。そもそもこの場は立場を気にせずに楽しんで欲しいと陛下も言っていた。

 だから、大丈夫だ……多分。

「はぁ、もういいよ。……それでなにをしていたか……だったね」

 お、どうやらレイルは諦めて話に付き合ってくれるようだ。

 なんともお優しいレイル様。

「私も君と同じような理由だよ。会場にはいたくなくてね」

「……レイル様も何かやらかしてしまったんですね」

「陛下とのお話で疲れてしまったのと貴族の子供の付き合いが面倒で会場にいたくないだけだ。君と同じにしないでくれるかな?」

「やはり、僕も同じような理由ですよ。初めてのことが多く疲れてしまったんですよ。同じですね」

「そうか」

「……」

 な……流された。少しくらい反応してくれてもいいのに。

 仕方ないのか。気にしてもしょうがない。

 それにしても会話が終わってしまった。次の話題を見つけないと。

 お披露目会の話題はやめておくか。……他に何か聞けることは。

 そう考えていると、ふとレイルの視線が庭に向いているのがわかった。

 この話題ならいけるかと思い話しかける。

「ここの庭は綺麗ですね。会場の賑やかな雰囲気とは違い、落ち着きます。思わず魅了されてしまいました」

 庭に植えられている花は白一色だが、絨毯のように綺麗に並んでいる。思わず魅了されてしまう。

 さすがは王宮だ。

「私もそれには同意だよ。ここにいると落ち着く」

 ああ……やっと意見があった気がした。

 勘違いでなければレイルは口角を少し上げていた。

 このタイミングならいいかもしれない。

「レイル様、これ、よろしければ」

「ほう、気がきくではないか。せっかくのご厚意だ。もらおう」

 僕は持っていたグラスを一つレイルに手渡した。どうやら受け取ってくれるらしい。

「レイル様、乾杯しましょう」

「……何故だ?」

「雰囲気ですよ。飲むだけでは寂しくありません?」

「……君は少し考えがズレていると言われたことがないか?」

「……否定はしません。なんせソブール公爵に無礼を働いたと勘違いされるくらいですからね。……あはは」

「笑い事ではないと思うのだが……まぁ、いいだろう。私もそういうのは嫌いではない」

 一応、僕の噂は勘違いですよと言ってみたが、思わぬ返しがきた。

 多分これがレイル様の素なのかもしれない。だいぶレイルはフランクになってきた。

 僕は嬉しくなり、少し洒落たことを言いたくなった。

 だから僕はレイルのグラスに合わせてこう宣言した。

「二人の友情に乾杯」

 キン、とグラスが当たる音が静かな空間に響き、飲むと冷たいジュースがさっきまで乾いていた僕の心を潤わした。

 レイルを見ると……飲まずに僕を呆れて見ていた。

「どうかしました?」

「私と君は友人なのか?」

 あ、雰囲気に流されてくれないかなと思ったが、残念ながら失敗だったようだ。

「……ですよね」

 結果はともあれレイルと顔見知り程度には慣れた気がした。 

 友達ゼロの僕にしては良い進展だったと思いたい。

 その後はレイルとは他愛のない会話を続けパーティ終了までの時間を潰したのだった。

 そして、お披露目会の次の日。

 ソブール公爵から招待状が届いた。

実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と呼ばれた悪役令嬢は重度のあがり症だった〜

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