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カフェで画像の確認を終えた二人は、店を出て歩き始めた。
「次はどこへ行くんですか?」
「ちょっと買い物に付き合ってもらってもいい?」
「買い物?」
思いがけない提案に凛は一瞬驚いたが、すぐに快く頷いた。
颯介が向かったのは、銀座の中でも高級ブランド店が立ち並ぶエリアだった。
(不動産王ともなると、この辺りにある店が行きつけなのね……)
そう思っていると、颯介がふいに立ち止まり、言った。
「プレゼント用のジュエリーを買いたいんだが、あの店とこっちの店、どっちがいいと思う?」
あまりの突然の言葉に、凛は思わず息を飲む。
(えっ……ジュエリーを贈る相手がいるの? じゃあ、どうして私なんかと……)
胸がきゅっと締めつけられ、動揺したまま考える。
(もしかして、『大切な女性がいる』って匂わせて、私に諦めさせようとしてる……? もしそうなら、諦めなきゃならないかも……だって、彼がそこまで想う相手なら、私なんかが敵うはずないし……あ~ショック~)
諦めにも似た感情が胸を覆い、凛は小さくため息をついて尋ねた。
「その方のご年齢は?」
「ん? どうしてそんなことを聞くんだ?」
「いえ……向こうのブランドは20代向けで、こちらは30代以上の女性に人気なので……」
実際、30歳の凛は、すぐそばにあるブランドの商品に、以前から憧れていた。もちろん手の届く価格ではなかったが、いつか自分へのご褒美に買えたらと夢見ていた。
「そうか。だったらこっちの店かな」
その言葉に、凛はさらに落ち込む。
(私と同世代なの? いっそ思い切り若い子だったら諦めもつくのに……はぁ、切ない……)
そんなことを思いながら、歩き出した颯介のあとをとぼとぼとついていく。
そして二人は、高級ブランド店の扉をくぐった。
店に入ると、奥からベテランらしい女性スタッフが近づいてきた。
「ようこそいらっしゃいませ。何かお探しでしたら、遠慮なくお申し付けくださいませ」
控えめな笑みを浮かべるスタッフに、颯介が言う。
「ネックレスを探してるんですが……」
「承知いたしました。では、どうぞこちらへ。すぐにご用意いたします」
案内されたのは、まさかの応接室……いわゆるVIPルームだった。
驚いた凛は、スタッフが席を外した隙に小声で尋ねる。
「前にも来たことがあるんですか?」
「うん、何度かね」
「そんなに?」
冗談のつもりで聞いた凛は、あっさり肯定されて目を丸くした。
(まさか……本当に真剣に想っている女性がいるの? それとも、馴染みのホステスにプレゼント……とか?)
後者であることを祈りつつ、またため息が漏れる。
(そうよね……44歳であんなに素敵なんだもの。周りに華やかな女性がいない方が不自然よね……)
颯介の母は、『家に女性を連れてきたことはない』と言っていたが、母親の知らないところで恋人がいても不思議ではない。
そう考えれば、この店に女性を連れて来たことが何度もあっても、何らおかしくはなかった。
そこへ、先ほどのスタッフが、若い店員二人を引き連れて戻ってきた。
ジュエリーのトレーを並べ終えると、店員二人は退出し、ベテランのスタッフが説明を始める。
「こちらが現在ご用意できる商品でございます。パーティー向けの華やかなものもございますが、そちらもお持ちしましょうか?」
「いや、普段使いできるものを探しているので、これで十分ですよ」
颯介は微笑みながら言い、凛に視線を向けた。
「どう? この中ならどれがいい?」
突然そう振られても、相手の好みが分からない凛は困ってしまう。
「ちなみに、どんな方なんですか? タイプによって好みも違うと思うので……」
「そうだな。わりと君に似てるかな。気が強くて、はっきりものを言うタイプで、仕事を持ったバリキャリだ」
(私と似てる……? あーん、だったら余計に残念。もしその人がいなかったら、私にもチャンスがあったかもしれないのに……)
凛は心の底からがっかりした。
しかしすぐに気を取り直し、こう言った。
「えっと……じゃあ、私の好みで選んでもいいですか?」
「もちろん」
「私、けっこう個性的なものが好きなんですけど……」
「構わないよ」
「でしたら、これなんて素敵だと思います」
凛が選んだのは、丸いシェルパーツの上に一粒のダイヤが輝く、シルバー系のネックレスだった。
シンプルで上品なデザインに、一目で心を奪われた。
バリキャリ系の女性なら、ゴールド系よりもシルバー系の方が仕事中も馴染む。
凛自身も普段はシルバー系ばかり身につけているため、迷いはなかった。
値札を見て飛び上がりそうになったが、この店では比較的手ごろな方だ。
億万長者の颯介なら問題ないだろう。
そこでスタッフが説明を加えた。
「こちらのネックレスは、チェーンがプラチナで、ダイヤの下には『マザーオブパール』という白蝶貝を使用しております」
「白蝶貝ですか……なるほど。なかなか個性的で美しいですね。では、これをいただけますか?」
あまりにあっさり決めたので、凛は思わず声を上げた。
「えっ? そんなに簡単に……?」
「うん、問題ないよ」
「え、でも……」
そのとき、スタッフが颯介に確認する。
「お包みはどういたしますか?」
「すぐ身につけて帰るので、そのままで」
「承知しました。では、ケースだけご用意いたしますね」
カードを受け取ったスタッフが部屋を出ていくと、凛は状況が理解できないまま、ただ茫然としている。
その隙に、颯介はネックレスを手に取り、留め具を外して凛の首につけた。
「えっ?」
ひんやりしたチェーンの感触に、凛はようやく我に返った。
「よく似合ってるよ」
「でも、これって、お知り合いにプレゼントするんじゃ……」
「だから、君にプレゼントだよ」
凛は思わず声を上げる。
「こ、こんな高価なもの、受け取れません」
「遠慮するな」
「遠慮も何も、受け取る理由がありませんから……え? でも、これって、最初から私に……?」
「もちろん。君のその美しいデコルテに、ネックレスがないのはもったいないよ」
穏やかに微笑む颯介を見た瞬間、凛の膝が崩れ落ちそうになる。
もしソファに座っていなかったら、そのまま床にへたり込んでいたに違いない。
(ヤバい……ヤバすぎる……。今ので完全にノックアウト……どうしよう……これじゃ、彼を堕とすどころか、先に私がやられちゃう……)
動揺する凛とは対照的に、颯介は凛の滑らかな首筋に輝くダイヤを、満足げに見つめていた。
コメント
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颯介さん、憎い演出✨✨ 凛ちゃんを地獄から天国へ〜🪽 そして、最初からプレゼントと言えば遠慮して選ばないこともお見通しで、他の人へのプレゼントとしてしっかり選ばせるテクニック大人だわ〜💕 凛ちゃんの気持ちを更に惹きつけ、何度か来たことがあるとちょっと妬かせたり、奈美への牽制にもなるし、出来る大人と男✨にくいにくいにくい〜
颯介さんの思わせぶりな発言の連発に凛ちゃんもショックを隠せなかったけど、実は颯介さんが自分のモノって印を付けたかったってことかな🤭🤣💝💝✨ そして凛ちゃんに颯介さんの今の気持ちを伝えたかったんだろうな〜👩❤️👩 凛ちゃん、膝ガクガクで堕とす前に堕とされちゃったね🥳🎉🩷 奈美もすぐに気づいちゃいそう🤣ザマァないね!
ニクイネー!!😎👍やっぱり大人のイイオ・ト・コ…😎🖤 「堕としてみろよ」と煽り、気のないフリをして油断させておいて…😁 しっかりお気に入りの子に、首輪(ネックレス)つけちゃう…💕💕🤭 堕とすつもりが、堕とされちゃうよね〜(*´艸`)ウフフ♡♡♡