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「出口だ!」
俺と美咲は倉庫の奥へ走った。
鉄の扉は半分だけ開いている。
美咲が勢いよく押す。
ギィッ――。
冷たい夜風が流れ込んできた。
「行け!」
俺はノートパソコンを胸に抱え、外へ飛び出す。
そこは細い路地だった。
倉庫街の裏。
街灯も少なく、人影はない。
「こっち!」
美咲が迷いなく走る。
後ろでは怒鳴り声が聞こえた。
「裏だ!」
「逃がすな!」
足音が増えていく。
一人じゃない。
何人もいる。
俺たちは角を曲がり、さらに細い路地へ飛び込んだ。
数分後。
人気のない小さな公園。
息を切らしながらベンチの陰に身を隠す。
耳を澄ます。
足音は……聞こえない。
「撒いたかな」
俺が小声で言うと、美咲は首を振った。
「まだ油断しないで」
しばらく待つ。
静かだった。
俺は抱えていたノートパソコンを見つめる。
「開こう」
美咲は周囲を確認してからうなずいた。
電源を入れる。
パスワード画面は出ない。
デスクトップにはフォルダが三つだけ。
**参加者**
**案件**
そして――
**管理者**
「管理者……」
カーソルを合わせる。
開こうとした瞬間。
画面いっぱいに警告が表示された。
**《このデータは自動削除対象です》**
残り時間。
**09:59**
「カウントダウン!?」
数字が減っていく。
09:58
09:57
「どういうこと!?」
美咲が叫ぶ。
「組織が遠隔で消そうとしてる!」
「ネットには繋いでないぞ!」
「違う!」
美咲は画面を指さす。
「このパソコン自体に仕掛けられてる!」
残り9分。
焦る。
どれを開く?
全部は見られない。
その時だった。
デスクトップに新しいウィンドウが開く。
黒い背景。
白い文字。
**《神谷悠真》**
俺の名前。
勝手に入力されていく。
**《最後の選択をしてください》**
画面には三つのフォルダが並ぶ。
**参加者**
**案件**
**管理者**
そして一文。
**《開けることができるのは、一つだけです》**
「一つだけ……?」
俺は息を止めた。
どれを選ぶ。
参加者を救う情報か。
犯罪の証拠か。
黒幕につながる情報か。
時間だけが減っていく。
09:12
09:11
09:10
美咲が俺を見る。
「悠真」
「決めて」
俺は震える指を、ゆっくりと動かした――。
(第三十二話へ続く)
コメント
1件
ああ、第31話、読み終わりました…!もう、心臓がバクバクしてますよ。逃亡シーンの緊張感がすごくて、息を止めて読んでました。特に、カウントダウンが始まってから、画面から目が離せなくなって。悠真くんが震える指を動かすシーンで、私も一緒に「決めて」って祈るような気持ちになりました。どのフォルダを選んだのか、もう気になって仕方ないです…!