テラーノベル
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残り時間。
**09:07**
数字だけが無情に減っていく。
「悠真!」
美咲の声が響く。
「早く!」
俺は画面を見つめた。
**参加者**
**案件**
**管理者**
どれも重要だ。
でも、一つしか開けない。
「……管理者」
気づけば、そうつぶやいていた。
「え?」
美咲が驚いた顔をする。
「参加者の情報じゃなくて?」
俺は首を振った。
「今助けられる人は限られてる」
「でも黒幕に近づければ、もっと多くの人を助けられる」
言いながら、自分でも震えていた。
正しいかどうかなんて分からない。
それでも──。
俺は**管理者**をクリックした。
画面が暗転する。
残り時間が止まった。
**00:01**
ギリギリだった。
「開いた!」
フォルダの中には、たった一つのファイル。
**manager.txt**
俺はすぐに開いた。
中に書かれていたのは名前じゃない。
住所でもない。
一文だけだった。
**管理者は存在しない。**
「……は?」
思わず声が漏れる。
「どういうこと?」
美咲も画面をのぞき込む。
スクロールする。
続きがあった。
あなたたちは『管理者』という一人の人間を追っている。
だが、この組織に管理者はいない。
指示は複数の人間が分担し、自動化された仕組みで送られている。
一人を捕まえても終わらない。
「そんな……」
俺は言葉を失う。
つまり。
黒幕を捕まえれば終わりじゃない。
黒幕なんて、最初からいない。
その時、画面がまた切り替わる。
新しい文章が表示された。
もし、このファイルを読んでいるなら。
Rは、おそらくもう捕まっている。
心臓が大きく鳴る。
続きを読む。
彼は命をかけて時間を作った。
あなたたちに、この真実を届けるために。
俺は拳を握った。
R……。
画面の最後には、一枚の画像が添付されていた。
古いビル。
入口に錆びた看板。
そこには小さく、
**「蒼葉システム」**
と書かれている。
「会社……?」
美咲が首をかしげる。
「聞いたことない」
俺は画像を拡大した。
ビルの窓。
その一枚だけ、カーテンが半分開いている。
誰かが立っていた。
顔は見えない。
でも、こちらを見ている。
その人物の足元には段ボール箱。
側面には黒いマジックで書かれていた。
**『応募書類』**
その瞬間。
公園の外からパトカーのサイレンが近づいてきた。
一台。
二台。
いや、それだけじゃない。
救急車までいる。
「何かあった?」
俺が立ち上がると、美咲のスマホが鳴った。
ニュース速報。
そこには信じられない見出しが表示されていた。
**『市内の貸倉庫で火災 身元不明の遺体を発見』**
俺たちは同時に画面を見つめる。
Rなのか。
それとも――。
(第三十三話へ続く)
コメント
1件
うわっ、まさかの「管理者は存在しない」…!悠真が最後の選択を「管理者」にした瞬間、正解だと思ったんだけど、その裏にこんな真実が隠されてるなんて。Rが命を懸けて時間を稼ぎ、このファイルを届けてくれたんだと思うと胸が熱くなる。ラストの火災ニュースと蒼葉システムのロゴ、そして段ボールの「応募書類」の文字が凄く不気味で。次回が待ちきれないです!るしゅさん、今回も最高でした!
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